提案
「あ、もう来てたんだ。楓ちゃん、こんにちは」
「こんにちは、佑馬お兄さん」
「ごめん、僕らのほうが先についちゃったみたい。お邪魔してます、佑馬君」
ダンジョンへとやってきたら、いつもの定位置には、すでに先客がいた。
渚と楓ちゃんだ。
二人そろってダンジョンの穴の前にいる。
「あれ? 渚もスコップ持っているじゃん。もしかして借りてきたの?」
「うん。ギルドで借りられるって聞いたから、ダンジョンに入る前に借りてきたんだ。楓には小さなシャベルを貸してくれたから、僕らもお手伝いできる、つもりだったんだけどね」
「ん? どうしたの? なにかあったの?」
「ううん。なにかあったわけじゃなくて、単純に僕の力だとこのダンジョンの壁って全然掘れないんだよね。佑馬君はすごいね。ザクザクと掘れるんだから」
二人はそれぞれスコップとシャベルを持っている。
前回は道具もなかったし、おしゃべりの時間が長かった。
どうやら渚は、それを気にしていたらしい。
僕が穴を掘るためにダンジョンに来ているのに、二人が来たことで手を止めさせてしまったと感じていたようだ。
別に気にする必要はないって言ったんだけどな。
楓ちゃんも含めて話し相手になってくれるのは楽しいから問題なし。
だが、道具を借りてきてくれているというのは助かる。
前にも感じたけれど土嚢袋に土を入れてもらえるだけでも十分にありがたいからだ。
「ダンジョンの土って、めちゃくちゃ硬いからね。僕も最初はそのスコップで無理やり土の表面を崩して土を回収していただけだし、そんなもんじゃないかな?」
「本当に? でも、佑馬君はこんなに大きな穴を一人で掘ったんでしょ? スコップの先で壁をほじるだけじゃ、絶対に無理だと思うけど」
「まあ、慣れだよ。それに道具も違うしね。でも、まともに穴を掘るには、魔力を使わないと難しいかもしれないね」
「魔力? そういえば、前もそんなことを言っていたっけ? え、もしかして、佑馬君って魔法使いだとか?」
ダンジョンの土を掘るには単純に力があればいいというわけではない。
いや、力があってムキムキならば別にそれでも十分掘れるのかもしれないけれど、少なくとも僕はムキムキになっているわけでもないし、力自慢でもない。
だけど、今の渚よりははるかに効率よく土を掘ることができる。
その秘訣はやはり魔力にある。
とくに魔力を使っての肉体強化のおかげだ。
身体機能を底上げするこの方法にたどり着いてからは、普通のスコップでも多少は掘れるようになったことは記憶に新しい。
ちなみに、渚がイメージしているような魔法使いとは全然違うと思う。
渚も、そこまで時間をかけずにできるようになると思う。
だって、僕もできたんだし。
「渚もやってみる? 魔力を使ってパワーをあげる肉体強化のやり方を教えようか?」
教えるなんて初めてだけど――
自分ができたことなら、きっと伝えられるはずだ。
僕がそう言うと、渚は半信半疑な様子ながらも「うん」と言ってくる。
それを横で聞いていた楓ちゃんも、「私もー」と大きな声で言う。
そんなわけで、僕は自分で考えた魔力の使い方を二人にレクチャーすることにした。
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