餌
左肩にスーちゃんを引っ付けながら穴を掘る。
マイスコップを使い、体と道具を強化しながら一心不乱に掘り続ける。
スライムを生み出すための泥づくりはひとまず終了。
検証の結果、きれいな泥団子を泥と一緒に放置すればスライムになるということがわかった。
だから、それ以上はやらない。
あとはただ、気の向くままに穴を掘り続けるだけだ。
だが、その手を止める音がした。
僕のスマホのアラームだ。
一定期間でピピピと音が鳴るように設定してあり、その都度水分補給をしたり、カロリーと栄養を摂取したりしている。
そのアラートが鳴ったので、穴掘り作業を一時中断し、水を飲み、ダンジョンバーを齧った。
「ん? スーちゃんもこれが欲しいの?」
僕が立ったまま水を飲みながら、ダンジョンバーを口にしていると、スライムにあるはずのない視線を、スーちゃんから感じた。
左肩から、僕の口へと熱烈な視線が向けられている気がする。
それが気になったので、スーちゃんに聞いてみた。
するとスーちゃんの小さな体がブルブルと震えた。
僕の質問に返事をするのにブルブル震えればいいと覚えてしまったのだろうか。
正直、それだけだと意味はわからないはずのジェスチャーだ。
それなのに、不思議とわかる。
ブルブル震えているスーちゃんから、自分もそれを食べてみたいという思いが伝わってきた。
「うーん、まあいいか。じゃ、ちょっと食べてみてよ。でも、ちょっとだけだよ。これは僕にとっても大切なものだからね」
そう言いながら、ダンジョンバーを指でボキッと折り、小さなかけらをスーちゃんの体に押し当てた。
スライムには口などはないが、その体すべてが口であるともいえる。
今のところ、僕はスーちゃんが何かを食べたり吸収したりしたところを見たことはないが、スライムとはそういうものだろうという認識のもと、雛鳥に餌を与える親鳥のように、ダンジョンバーのかけらをその体へと押し当て、内部へと取り込ませた。
さらさらにして弾力のあるスーちゃんの茶色い体にダンジョンバーが取り込まれていく。
それがすべて体の中へと沈み、ゆっくりと吸収されていく。
ぶるん、と小さく震える。
―——嬉しそうだ。
スーちゃんが、喜んでいるのが伝わってきた。
きっと気に入ってくれたんだろう。
……そうか。
スライムも生き物なんだなと、スーちゃんがダンジョンバーを食べるのを見て思った。
スーちゃんを自分の家に持ち帰りたいという思いがあったが、食べ物となる餌については何も考えていなかったことに今さらながらに気が付いた。
食べなければスライムがどうなるのかは全く分からない。
が、スライムを飼うと決めたのであれば、飼い主としてそのスライムの食べ物には責任を持つ必要があるのではないだろうか。
飼うと決めた以上、面倒を見るのは当たり前だ。
まさか、ダンジョンバーしか食べないなんてことはないよね?
あれは一つ五百円くらいして、僕的にも結構な出費となる補給食だ。
あげてもいいけれど、それを主食にされて、たくさん求められても困る。
スーちゃんがなにをどのくらい食べるのか知らねばならない。
僕はダンジョンバーを溶かしきったスーちゃんを見つめながらそんなことを考えていた。
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