超集中(ゾーン)
「予想以上に雑食だね、スーちゃんは」
ダンジョンを探索する探索者向けに作られた栄養とカロリーを十分に含んだ消化の良いダンジョンバー。
それをスーちゃんが気に入ったことで、少し不安になった。
まさか、これしか食べないなんてことはないよね、と。
だが、そんな僕の心配は杞憂だったみたいだ。
なぜなら、スーちゃんはダンジョンバー以外も、なんでもモリモリ食べていたからだ。
例えば、ダンジョンバーを入れるために使用されている袋。
これはビニール製の袋が一番外にあり、ダンジョンバーはその袋の中で銀紙にも包まれている。
その両方ともがダンジョンバーを食べきった後にはごみとして残ることになる。
そんなゴミにしかならない袋を、スーちゃんはおいしそうに食べていた。
雑食だ。
スーちゃんは、人間なんて比べ物にならないくらいなんでも食べられるみたいだ。
まあ、考えてみれば当然か。
ダンジョン内には無数のスライムが存在していて、そのスライムたちは倒されたモンスターの死体の残りや人間が出したゴミや遺品などももれなく消化してしまうそうだしね。
なんでも食べられるのは当然といえば当然か。
だが、なんでも食べるというのと、好みは違う。
せっかく仲良くなったスーちゃんに嫌いなものを無理やり食べさせようとは思わない。
そう思っていたが、穴掘り作業中に出たゴミなどもスーちゃんが嬉しそうに食べているのを僕は感じていた。
あまり味に好みはなさそうだ。
ダンジョンバーしか食べないなどの高級志向ではなくてよかったと思おう。
しかし、それでも気に入ったものというのはあるようで、それは僕の魔力が好きみたいだ。
スーちゃんは僕の肩にへばりつきながら、体から出る魔力を食べていた。
僕が穴掘り作業をするときに自分の肉体を魔力で強化しているのだけれど、その魔力を取り込んでいるっぽい。
――そんな気がした。
といっても、それは僕の行動を邪魔するほどではない。
これはあくまで感覚的な話で、正しいかはわからない。
が、おそらく僕の肉体強化は魔力操作の練習はしているけれどまだまだ未熟で、強化するために消費する魔力がうまく強化につながらずに漏れ出てしまっているのだと思う。
そんなロスしている魔力をスーちゃんが吸い取っているのだ。
普通に考えれば、これはスーちゃんが僕の魔力を横取りしていることになるのかと思う。
魔力だけで見れば、明らかにデメリットだろう。
だが予想外なことに、これが僕にメリットをもたらした。
魔力を吸収されたことで、なぜか僕の感覚が今までよりも鋭敏になった。
きっと、魔力を使って肉体強化をするときに、一切のロスなしに体外に魔力を漏れさせずに百パーセント強化に使用できていれば、筋力だけではなく感覚も鋭敏化されたのではないだろうか。
うまく言えないけれど、魔力が漏れ出ずに皮膚にとどまることで、皮膚の感覚も強化できるとかそういう感じになるのかと思う。
これが、スーちゃんの魔力吸収で奇跡的に同じ状況になったのではないかと予想する。
つまり、僕は自分の体から一切の魔力を漏れださないで活用するという、魔力操作の達人のような状況がスーちゃんによってもたらされた。
これにより、触覚はもとより、視覚も聴覚も嗅覚も、さらには味覚すら強化されている。
不思議だ。
そんなふうに五感すべてが強化された状態になると、よくいうゾーンに入る、という感覚になるみたいだ。
要するに超絶集中状態に僕は陥った。
僕はスーちゃんの助けで、この超集中を維持しながら、それ以降も穴掘り作業を続けていった。
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