検証実験
「ふんふんふーん」
体を魔力で強化し、スコップも魔力で強化しながら、ザックザクとダンジョンの壁を掘り進める。
もうかなり慣れたものだ。
数日前までは僕も渚みたいに全然掘れずにいたけれど、マイスコップを手に入れてからはかなり順調に掘ることができるようになっている。
それまではダンジョンの壁に小さな穴ができているというだけであったが、ここに来て僕らのような子どもの体ならば身を隠せるのではないかというくらいの小さめの空洞を作れるようになっていた。
そんなミニ洞窟をさらに広げるように壁を掘り、集めた土を一か所に集めていく。
いつもならば土嚢袋に入れるところだけれど、今回は違う。
家から持ってきた何本ものペットボトルに入った水。
わざわざ重い思いをしながらダンジョンに持ち込んだその水を使ってダンジョンの土と混ぜ合わせ泥を作るつもりだ。
渚の妹である楓ちゃんのように泥からスライムを発生させることができるのか。
というか、発生するのかを確かめるつもりだ。
ただ、そこで気になることがひとつあった。
それは、楓ちゃんのようにピカピカに磨き上げた泥団子が必要なのかどうかということだ。
楓ちゃんから話を聞いたが、正直どのようにしてスライムを見つけたのかがハッキリわからない。
わかっていることは泥が動いていたことと、その中にキラキラ光る魔石があり、それを手でつかみとったら動く泥は動かなくなったということ。
それだけだ。
穴掘りをして集めた土に水をかけて泥を作るだけでもスライムが生まれてしまうのか、それとも泥団子が重要なピースになるのかがわからない。
わからないので、自分で調べようと考えた。
そこで、穴の数を増やすことにした。
今まではダンジョンの壁を掘っていたが、この実験と検証を行うにあたり、ダンジョンの床も掘ることに決めた。
ダンジョンの床にスコップを突き刺しててこの原理を使って掘り起こし、浅く広く穴を広げていく。
そして、その穴を二つ作り、それぞれに掘り返した土を入れる。
片方の穴には、穴に入れた土に水をかけ、スコップで混ぜ合わせて泥を作る。
そして、そのまま放置して動く泥であるスライムが生まれるのかを見守ろうと思っている。
対して、もう一つの穴は同じように泥を作るのだけれど、その泥の一部を使って泥団子を作ろうかと思っている。
楓ちゃんの行動を参考にして、なるべくピカピカときれいに光るように表面を磨いた泥団子を作って、それと泥を一緒に穴に入れる。
スライムが泥から生まれるときに、魔石の核となるようなものが必要なのかもしれないので、もしかするときれいな泥団子がその役割を果たすのではないかと考えたからだ。
二つの穴にそれぞれ土を入れて泥を作り、その片方の穴のそばで僕は一人泥団子を作り始めた。
そこで、ふと思いついたことがあった。
楓ちゃんの見た動く泥がスライムであるのであれば、それはれっきとしたモンスターである。
モンスターは魔力を持っていて、体内に魔石がある。
であれば、核になるかもしれない泥団子にも魔力があったほうがいいのではないか?
そう考えたので、土に水をかけて湿らせた泥を握って団子状にするときも、その表面を磨き上げるときにも僕は自分の魔力を手のひらから泥団子へと送り込みながら作業を行った。
マイスコップを穴掘り中に強化するのに手から魔力を送り込んでいたおかげで、何の問題もなくスムーズにできる。
作業の途中で、「楓ちゃんのケースを参考に実験しているのに作業手順や条件を変えたら意味ないのでは」とも思ったけれど、まあいいやと気持ちを切り替えた。
失敗すればやり直して確かめればいいだけだ。
こうして、僕はただの泥を集めた穴と、魔力を込めたきれいな泥団子を中心に配置した泥の穴の二つを作り、それを観察しながらもいつもどおりのダンジョンの壁の穴掘り作業を再び始めた。
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