楓の持ち物
「あの、そちらのお嬢さんの持つ魔石も買い取りいたしましょうか?」
「え? 魔石? なんのことですか?」
「はい。そちらは極小魔石かと思われます。ダンジョンで手に入れた品を買い取りする際に一番多いものがその魔石で、そのサイズですとひとつ百円ほどでの買い取りをしています」
いつもどおりに土を持ち込み買い取ってもらう。
今持ち込んだ分の土の代金を受け取り、そのまま振り向き家に帰ろうとしたその時、買取カウンターの向こうから呼び止める声がした。
だが、その言葉の意味が理解できなかった。
魔石ってなんだ?
僕はそんなの持っていないぞと頭にクエスチョンマークが浮かび、隣の渚、そのさらに向こうにいる楓ちゃんへと目を向ける。
小学生の楓ちゃんはギルド建物に入ってからは渚と手をつないで離れ離れにならないようにしていた。
もう片方の手には、きらりと光る何か小さいものを持っている。
……いつからあんなものを持っていたんだろうか。
全然気づかなかったが、まさかダンジョンに入る前から握っていたとは思えない。
少なくとも泥団子を作っているときには両手を使っていたし、手にはなにも持っていなかったと思う。
ということは、ダンジョン内で拾ったのだろうか。
キラリと光る、小さな水晶のような見た目の魔石を。
「えっと、どうしたらいいのかな、佑馬君?」
「わかんないけど、楓ちゃんが拾ってきたんならそれの所有権は楓ちゃんのものだろう。どうする楓ちゃん? それを売ってお金に変えればおいしいものが買えるけど、大事なものなら持って帰ってもいいよ」
どうするかは、僕が決めることじゃない。
僕にその決定権はない。
魔石とやらを持っている楓ちゃんがどうしたいかによるとしか言えない。
なので、楓ちゃんに聞いてみた。
この子がなんでそんなものを持っていたのかは知らないから、ダンジョンに入った記念に持って帰りたいならそれもありだと思う。
「おいしいもの? アイス食べたいな」
「あ、いいね。ダンジョンで動いて汗もかいたし、その魔石を売ってそのお金でアイスを買って食べる? 渚は僕の穴掘りを手伝ってくれたから土の金額を分けて、一緒にアイスを買おうよ」
「いいの、佑馬君? 僕は全然穴を掘れなかったから手伝えていないと思うけど……」
「そんなことはないよ。土嚢袋を広げて持ってくれたり、スコップとかの荷物を持って帰ってくれたのはすごく助かるんだから。じゃあ、楓ちゃん、その魔石をお姉さんに渡してくれないかな。それも買取でお願いします。お金はその子に渡してあげてください」
「はい。かしこまりました」
もしかすると魔石を売るのは嫌がるかな、とも思った。
その時はその時で、土を売ったお金でアイスやジュースなんかを買って食べ歩きしながら帰ればいいかと思ったけれど、意外とすんなりと楓ちゃんは魔石を売ることに決めた。
多分、自分でお金を稼ぐなんてことは初めてだろう。
僕も数日前まではそうだったが、なんだか大人になったように感じてちょっとドキドキしたことを覚えている。
魔石の代金を受け取った楓ちゃんは、さっきまでと同じように、百円玉を大事そうに握っていた。
僕らはその後ギルド建物を出て、帰りの途中でアイスとジュースを買い、公園で一緒に食べたりしながらしばらく話し込んで家に帰っていった。
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