ダンジョンへの来訪
えっほ、えっほ。
声を出してリズムを取りながら、ダンジョンの壁を掘る。
昨日に続き今日もダンジョンの壁の穴はそのままの状態だった。
二日分の穴掘りの跡が残ったところから、今日も続きを掘り進めていく。
やっぱりダンジョンで採れた鉄を使って作られたというマイスコップはすごい。
普通の鉄製スコップだと、まるで岩盤を相手にしているみたいに、全力でもほんの少しずつしか掘れなかった。
それが、このマイスコップならザクザクと掘り進められる。
ただ、そのスピードには制限がある。
問題は、僕の体力と魔力が長く続かないという点だ。
肉体強化だけではなく、魔力をスコップにも纏わして採掘力の強化をしているからかすぐに体にだるさと空腹がやってくる。
そのたびにダンジョンバーを食べて凌いでいるけど、どうしても効率は落ちる。
本当ならばずっと掘り続けてもっと穴を深く広げていきたいのに頻繁に休憩が必要になるし、掘った後に残る土の処理もある。
手押し車に載せてギルド建物に何度も往復しているが、これがなかなかの時間のロスだ。
いくら、魔力操作の練習になるとはいえ、その時間は穴掘りの進捗は完全に止まってしまうだけに、どうにかならないかと考えているが解決策は浮かばない。
そんなときだった。
「……あ、よかった。本当にダンジョンで穴掘りをしてたんだ。いないんじゃないかと思ってドキドキしたよ」
ダンジョンの壁を掘り、そこで得た土を土嚢袋に入れているときだった。
背後から急に声をかけられた。
この場所で声を掛けられるとすれば探索者の人たちになるので、たいていは大人の男の人の声だ。
だが、今回の声はそんな野太い声ではなく、華奢な印象の、高めの音だったため、急に声を掛けられてビクッとしてしまった。
慌てて振り向いて、その人物の顔を見て一安心する。
「あ、渚か。急に話しかけられてびっくりしたよ。来てくれたんだね。ようこそ、ダンジョンへ」
私服姿の細い少年が、ダンジョン内で異彩を放つ。
僕自身も同じように私服だけど、穴掘りするために運動着っぽい格好をしている。
が、クラスメイトの渚はTシャツにズボンという普通の町のスタイルでやってきた。
そして、その後ろにはもう一人、渚よりも小さく細い子が隠れている。
「ほら、挨拶しなよ。佑馬君、妹の楓だよ。楓に聞いたらダンジョンに行ってみたいっていうから連れてきたんだ」
「よろしくね、楓ちゃん。僕の名前は桂佑馬です。お兄さんの渚と同じクラスの中学二年生だよ。楓ちゃんは何年生なの?」
「……四年生、です。よろしく」
声ちっさ。
渚の後ろに隠れた妹の楓ちゃんは、渚の体から顔だけ出して僕のことを観察してくる。
……お菓子の一つでも買ってきておけばよかったかな?
歓迎するにはなにもないダンジョンでの穴掘り場所で僕は両手を広げて、再び大きな声でようこそと言い、二人を迎え入れることになった。
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