おじさんの名前
昨日はお母さんに怒られた。
お昼に勝手に食べたものは今日のお父さんのお弁当用に用意していたものだったのにと言われた。
ごめん、お父さん。
今日のお父さんの弁当は、から揚げなしになってしまいそうだ。
ただ、そんなに食べるならと、これからは昼ご飯を多めに用意してくれるらしい。
なので、勝手に冷蔵庫の物を食べないと約束して、許してもらった。
そんなことがありつつも、今日も朝からバクバク食べて、ダンジョンへ向かう。
今日もあのお弁当屋さんが開いていたら、買い食いしようかなと考えながら、ダンジョン用のマイスコップと水筒を持って自転車に飛び乗って出かけた。
「おう、おはようさん。頑張ってるみたいだな、坊主。お前が空けたダンジョンの壁の穴だがな。ここを通る探索者が、何人も不思議がっていたぞ」
「そうなの? 僕以外にも穴掘ったりダンジョンで何かする人っているんじゃないの?」
「そりゃあいるだろうけどな。ただ、普通はもっと金目のものが手に入る採取ポイントみたいなところをダンジョン内で見つけてそこを掘るくらいだろう。何もない場所を、ダンジョンが修復できないほど掘るやつは、あんまりいないんじゃないか?」
へえ、そういうものなんだ。
そう考えると、例えば僕の使っているスコップだってそうか。
ダンジョンで採れた鉄を使って作られたこのマイスコップだが、その鉄はダンジョン内のどこかで手に入れられたものに違いない。
さすがに、何も考えずに穴を掘り続けて見つかるものじゃないだろう。
例えば、鉄が地表に見える鉄鉱脈の採掘ポイントでもあるのかもしれない。
それか、ダンジョンに出てくるモンスターが鉄の武器でも持っているとかかな?
わざわざ僕みたいに穴を掘るだけの人はいないのだろう。
「なにか言ってくる人、いるかな? 入り口近くで穴を掘ってて邪魔だ、とか言われないかは気になっているんだけど」
「んー、まあ大丈夫だとは思うが、もしそうなら俺の名を言えばいいさ。入口で監視している金剛寺が許可しているって言えばいい。それでも文句を言われるようならここに戻ってこい。ただまあ、ほかの人の邪魔にはならんようにだけは気を付けておいてくれ」
「うん、わかったよ。ありがとう、監視員のおじさん」
「金剛寺だっつってんだろ。忘れんなよ、俺の名前を」
監視員のおじさんは金剛寺さんというらしい。
今まで知らなかったが、毎日のようにダンジョンの入り口で監視しているから探索者にもきっとよく知られた人なんだろう。
このおじさんの名前を出せば、ダンジョン入口近くのところで穴掘りをしていても、ほかの探索者にも理解してもらえるのか。
……意外とすごい人なんだろうか、このおじさんは。
いつも入り口近くで座っているだけの人なので、暇なんじゃないのかな、なんて思っていたが顔が広い人なのかもしれない。
改めてお礼を言いながら、僕はダンジョンに入り、今日の穴掘りを開始した。
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