誘い
「……もう、本当にいいって言っているのに佑馬君って意外ということを聞いてくれないよね。わかったよ。それならこのおかずはもらうことにするよ。ありがとう」
僕が勝手に押し付けた三種盛りお惣菜セットを遠慮する渚。
「もう買っちゃったから」と言って、半ば強引に押し付けることに成功した。
ここの商品はどれもお値段が安くて、ダンジョンバーと同じくらいだ。
休日一日で稼いだ分から出しているので問題ない。
そんな事情を、僕は渚と一緒に自転車を押しながら、家のほうへ歩きつつ話した。
「佑馬君ってダンジョンに行っているんだ? あそこってモンスターが出るんでしょ? 危ないんじゃないの?」
「奥に入ればモンスターが出るけど、僕が行くのは入口から近いところだけだからね。そこなら大丈夫なんだよ」
「へえ、そうなんだ。でも、そんな入り口近くでも自分でお弁当を買えるくらいお金が稼げるんだ」
「うん、そうだよ。最初は親と言い合いをして気晴らしに入っただけだったんだけどね。それなら入口で土でも掘って売ったらどうだってダンジョン入口にいる監視員のおじさんに言われて、最近はそれが趣味みたいになっちゃっているんだ」
「へえ、すごいなぁ。うちはあんまりお金がないけど、自分で働いて稼ぐなんてしたことないよ。佑馬君は大人なんだね」
「そんなことないよ。ただ遊びでやっているだけだし、別に穴を掘って土を集めるのは子どもの僕らだってできるんだから」
薄暗くなった路地を二人で歩きながら話し続ける。
渚は僕がダンジョンでお金を稼いだという話を聞いて、自分には無理そうだと言う。
だけど、そんなことは全然ない。
効率はわからないけど、お惣菜一つ分くらいならだれでも稼げると思う。
入り口近くならモンスターも出ないし、危険はほとんどない。
「あ、いいこと思いついた。それなら渚も一緒にダンジョンで穴掘りしてみないか? 稼いだお金は二人で分ければ妹さんに食べ物を買って帰ることもできると思うよ」
「ううん……それはちょっと難しいかな。妹はまだ小さいから、家に一人で残すわけにはいかないんだ。今は家で寝ているからお弁当を買いに出たけど、一人っきりにさせるとすぐ泣くしね」
「そっか。じゃあ、妹と一緒に来ればいいよ。別に穴掘りを一緒にしなくてもいいからさ。僕は明日もダンジョンに行くから、遊びに来る感覚でどう?」
「ダンジョンかー。そうだなあ、家に帰って妹に聞いてみるよ。妹がダンジョンに行きたいって言ったら二人で佑馬君のところに行ってみようかな」
「オッケー。僕は朝からダンジョンにいると思うから、いつでも来なよ」
残念、断られちゃったか。
渚も一緒に穴掘りをしてくれるなら、きっと楽しいと思うし。
……ほんの少しだけ、作業も楽になるかもしれない。
土嚢袋に土を入れたり、運んでくれるだけでも助かるのに。
だけど、小学生の妹を一人にできないっていうのだから、無理強いはできないか。
明日来るかどうかはわからないけれど、約束した以上僕は朝からダンジョンに行こう。
そんなことを考えながら、家の方向が分かれる交差点で渚と別れた。
僕は途中にある小さな公園に寄り、デカ盛り焼肉弁当ご飯大盛と総菜セットを食べてから帰宅した。
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