渚
「佑馬君、こんばんは」
「あ、渚か。こんなところで会うとは思わなかったよ。渚もお弁当を買いに来たの?」
「うん。うちはこの時間、家に親がいないからね。よくこのお店に来るんだ。佑馬君もここにはよく来るの?」
「ううん。店の前は通ることがあったけど、入るのは初めてだよ。このデカ盛り焼肉弁当ご飯大盛が目に留まって買ってみようかと思ったんだ」
お弁当屋さんの前で会ったのは、クラスメイトの渚だ。
今年同じクラスになって知り合った、教室でもよく話す友達の一人だ。
そういえば、渚の家は母子家庭だって言ってたっけ?
お母さんが夜遅くまで仕事をしているって聞いたことがある気がする。
だからこのお店によくお弁当を買いにくるんだろう。
僕は会話の流れで、お目当てのデカ盛り弁当を指した。
すると、華奢な体の渚は、こんな量のものを食べるんだと驚いていた。
でも、こっちからすると逆だ。
渚は体が華奢すぎる。
クラスで身長順に並べば、前から一、二番目が定位置だ。
もっと食べたほうがいいと思うんだけどな。
「渚もこれ買ったらどう? 一緒に食べようよ」
「ええー。こんなに大きいのは無理だよ。それにそんなお金はないし。いつも買うこのお弁当にするよ」
そう言って渚が手に取ったのは、のり弁二つだ。
僕が選んだデカ盛り焼肉弁当ご飯大盛は量が多くてお値段はこの量にしては安いというものだが、のり弁はちょっと小さめのお弁当だけれどかなり値段が安いもので、このお店のもうひとつの客寄せ商品なんだと思う。
コンビニでおにぎりを二、三個買うよりもこの店ののり弁を買ったほうがコスパがいいと思う。
「そんなこと言って二個も買うじゃん」
「あ、自分で食べるのはもちろん一つだよ。もう一つは妹の分なんだ」
「あれ? 渚は妹がいるんだっけ?」
「うん。まだ小学生なんだ。佑馬君は会ったことなかったっけ?」
「うーん。ないと思うな。でも、小学校の子でもそののり弁だけだと栄養偏るよ。最近ショート動画で見たけど、きちんと栄養バランスの取れた食事が大事だって言ってたから、こっちのおかずとかも食べたほうがいいんじゃないの?」
「あはは。そうだと思うけど、うちは貧乏だからさ。このお弁当二つ買うだけのお金しかないんだよね」
少し照れたように、ポリポリと頭を掻く渚。
が、妹さんもそうだけど渚ももっとご飯を食べたほうがいいと思う。
だってどう見たって痩せすぎなんだし。
「いいよ。それなら今日は僕がおごるよ。実は今日はダンジョンでひと稼ぎしたからお金を持っているんだ。この三種盛りのお惣菜セット二つ買うから、渚がひとつ持って帰りなよ」
そんなことを言いながら、僕はデカ盛り焼肉弁当ご飯大盛と惣菜二つを手にレジへと向かう。
遠慮する渚の声を軽く受け流してそのまま会計を済ませ、強引に惣菜を一つ渚に渡すことにした。
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