十年後のクラスメイト
「あ、佑馬君、こっちだよ。すごい。本当に当時のままの姿なんだね」
街中にある、おしゃれなカフェ。
中学生だった僕には縁がなかった場所だ。
そんなカフェに、今日は呼び出されてやってきた。
カフェの中で僕を待っていたのは、きっちりとスーツを着こなした、さわやかな大人のお兄さんだ。
「……渚? 柊渚であってるよね?」
「うん。そうだよ。十年も会ってなかったから忘れちゃったかな?」
「いや、忘れはしないけど、わかんないよ。マジで? あの小柄で華奢だった渚が、こんなにカッコよくなってるなんて驚いたよ」
「ありがとう。あ、ここに座って。好きなものを注文してよ」
僕がこのカフェにやってきたのは、クラスメイトの渚と会うためだ。
ダンジョンから帰還してからの僕はひたすら家で自習をして過ごしていた。
ずっとダンジョンで彷徨っていたときのことを考えると、何も心配することもなく、おいしいごはんも用意してくれる家での勉強はすごく快適で楽しいものだった。
だが、さすがに寝るとき以外ずっと勉強し続ける生活に、さすがに飽きてきた。
いや、無理だって。
中学校は休憩時間とか体育の時間とかでクラスメイトと普通に話をして過ごしていたんだから、ずっと一人で勉強は寂しいよ。
というわけで、クラスメイトが恋しくなり、そこでピコンと反応したのが僕のスマホだ。
ダンジョンから帰ってきてからは、それ以前から持っていたものは十年前の古いスマホということになったので、新しいものに変わっている。
その新しいスマホでも電話番号は変わっていない。
そして、その中のSNSアプリが僕の電話番号を登録している友だちの紹介をしてきたのだ。
それが柊渚だ。
渚の最新の更新情報をピコンと通知で教えてくれた。
それを見て、すぐに渚へDMを送った。
その後何回かのメッセージを繰り返し、もっといろいろと話をしたいから直接会おうよということで今日の予定が組まれたわけだ。
渚は僕にメニューを注文するように勧めてきて、僕はそのメニュー表を見ながらも話を続けた。
「スーツ姿似合ってるね。渚って今は大学生じゃないの?」
「大学? 僕はもう卒業しているよ。僕らはもう二十三歳だからね。社会人を一年間経験しているかな」
「うへぇ、大人だー。じゃあ、会社に勤めているのか? なんか、アプリでは清掃の仕事をしてるって書いてたような。あ、僕このアイスカフェラテ飲みたいな」
「アイスカフェラテね。おっけ、注文しておくよ。えっと、そうそう。僕は清掃業をしているよ。自分で会社を興して経営しているんだ」
「え? 会社を興すって、どういうこと? 渚が社長さんなの?」
「うん。そうなんだ。だから今日の支払いは僕に任せて。飲み物以外にも食べたいものがあったら注文してよ。なにか食べない?」
すげえ。
クラスメイトが、信じられないくらい大人になってる。
しかも、社長とかかっけー。
きちっとしたスーツを着こなし、さらりときれいな髪が魅力で、童顔で可愛らしい感じの大人の男性である渚。
この間までの僕の知っている渚と全然違う大人の姿だけど、ニコッと笑った時の顔なんかは中学生のころの印象に戻る。
完全に置いて行かれた気がする。
クラスメイトの少年が自分で会社を経営する社長になっていると聞いて、やっぱり今はもう自分の知る時間から十年の時が過ぎているんだというのを嫌でも実感させられた。
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