小部屋のお宝
「くっそ硬いな、この床。どうなってんだよ」
地下神殿にある、ボス部屋のような大広間。
そこにつながる巨大な扉の前で、僕はそれを開けずに床を掘り始めた。
地下神殿と同じ石材の床をスコップで掘り進め、大広間の先にある小部屋につながる通り道を作り上げる。
口で言うのは簡単だ。
だが実際は、かなり骨が折れる作業だった。
地下神殿のボス部屋の下は、とんでもなく硬かった。
ダンジョンの天井をぶち抜いたときの岩盤以上かもしれない。
いくら非正規ルートで奥を目指そうと思っても、まるでダンジョンが対策しているかのように、その超硬度の床は行く手を阻んだ。
が、これであきらめるくらいならそもそもダンジョンの天井をぶち抜いてサバンナまで移動していない。
時間が掛かろうがひたすらに穴掘り作業を続けられるのは、僕の強みと言えると思う。
人っ子一人いない地下空間で、ひたすら穴を掘り続ける。
終わりが見えない。
それでも、掘るしかない。
マジックバッグに入れていたランダムフルーツを齧りながら掘る。
それが尽きれば、スーちゃんの体も少し食べさせてもらった。
そうして僕は、超絶に硬い床を掘り進めた。
使っていて思うが、マイスコップもすごいな。
こんな硬いものを掘るにはいくらダンジョン産の鉄を使用したスコップだとしても普通無理なんじゃないだろうか。
金属疲労を起こして折れるんじゃないかと心配になる。
しかし、そんな気配もなく頑張ってくれている。
スーちゃんや白龍の革袋が魔石によって変化を起こしたことを考えると、マイスコップも魔石の影響を受けているのかもしれない。
そんなマイスコップとスーちゃんに助けられながら、僕はようやくの思いでボス部屋らしき大広間の下を通り抜けた。
ついに、小部屋の中につながる抜け穴を開通させたのだ。
小部屋の床に開けた穴から、そっと顔を出す。
アースソナーを使っているけれど、念のためにも目視でモンスターがいないかどうかを確認する。
よかった。
モンスターはここにはいないようだ。
穴の淵に手をかけて体を持ち上げ、全身を小部屋に入れて伸びをする。
この小部屋の壁には普通の大きさの扉があり、そこは大広間につながっている。
小部屋と言いつつも広さは十畳ほどありそうだ。
一人で立つには十分な広さがある。
そして――その中心に、異様なものがあった。
魔石だ。
これまでダンジョンでモンスターを倒したときに手に入れられるドロップアイテムや、ダンジョンの天井を掘っていた時に見た魔石鉱脈で見たのと似たような魔石がなぜかこの部屋の真ん中にある。
だが、その大きさが異常だった。
これまで僕が見たことのある魔石の大きさは大きくても手のひらサイズがマックスの水晶のような結晶体だった。
だが、ここにある魔石はバスケットボールよりもさらに大きな、球状の魔石だ。
その魔石は、小部屋の中心で――宙に浮いていた。
「……もしかして、これが大部屋のボスでも倒したときに与えられる報酬なのかな? きっと小さい魔石よりも大きいほうが価値があるだろうし、この大きさだとどんな値段するんだろう」
宙に浮くビッグサイズのボール型魔石を見て、思わずその値段を考えてしまう。
たしか、ダンジョン入り口の床を掘って泥団子を作った時に生まれてくるスライムを倒して得られる小さな魔石でも一個五百円だったはず、だよな?
具体的な数値はもう曖昧だ。
このダンジョンでの生活が濃すぎて、記憶もあいまいになっている。
小さな魔石でそれだが、大きいほど買取金額も上がると聞いたような気もする。
この大きさだと多分珍しいだろうし、相当な金額になりそうだ。
「ん? もしかして、この魔石を食べたいのかな、スーちゃん?」
だが、そこで珍しい反応をしたのがスーちゃんだった。
いつもは僕の体にピタリと引っ付いて僕のサポートをしてくれているスライムスーツに徹するスーちゃんが、魔石に向かって体を伸ばした。
まるで「欲しい」と手を伸ばしているようだった。
いつもと違う。
明らかに、欲している。
そして、僕がスーちゃんに尋ねると肯定を示すようにプルプルと震える。
「いいよ。食べなよ。ここに来るまでスーちゃんに助けてもらったし、僕もスーちゃんの体を食べさせてもらっているからね」
スーちゃんが魔石を食べたいというのであれば、僕は止めない。
止める権利なんて、僕にはない。
だって、それだけスーちゃんには助けてもらっているんだから。
それに僕がスーちゃんの体を食べさせてもらっているから、スーちゃんの体積はきっと減っているはずだ。
その穴埋めとして補填するためにもたっぷりと魔力のこもっているであろう大きな魔石は効果的だろう。
僕がいいよというと、スーちゃんの伸びた体が一気に加速して魔石へとタッチした。
さっきゆっくりと伸びていたのは僕へのアピールだったみたいだ。
あっという間に魔石に届いたスーちゃんの体が魔石全体を包み、そして食べる。
その瞬間――世界が崩壊した。
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