ランダムフルーツ
「うまーい。これ、おいしー」
トレントの枝をぶっ飛ばした僕は、最後の一撃の勢いのまま地面へ着地し、そして果実のついた枝を回収した。
トレントはまだ死んでいない。
大きく広がる枝の三分の一を吹き飛ばし、幹には大きなえぐられた跡が複数あるものの、それでもトレントはまだ健在だった。
本来、探索者であればこの死に体のトレントへと再度攻撃を仕掛けてとどめを刺していただろう。
が、僕はそれをせず、枝だけを回収し、その場を離れた。
なぜその場を離れたのかといえば、果実を食べるためだ。
トレントの枝は本体から離れても手元に残っているのだが、もしも本体のトレントを倒してしまえばどうなるかわからない。
巨大樹の木登りの時に何度も飛行型モンスターに襲われた。
あのときは、非常に高い上空から飛行型モンスターとともに地面へとダイレクトアタックをして相手を倒していたが、倒した相手はドロップアイテムを残し、姿が消え去ってしまった。
つまり、トレントを倒すと手に入れた果実が消え去ってしまうかもしれない可能性を僕は嫌った。
もしかすると倒しても果実がドロップアイテムとして残るのかもしれないけれど、そればかりは倒してみないと分からない話だ。
であれば、無理せずこの場を離れ、回収できるだけの果実を楽しむほうがいいと判断した。
スーちゃんのスライムスーツを使って吸着力を増した手のひらでいくつもの枝を掴み、その場を離れて戦利品を確認する。
いくつもの果実が枝についていた。
見た目はリンゴみたいなものもあれば、ナシのようなものもあり、モモみたいなものもあった。
そのうちの一つを手に取ってしゃくり、と齧る。
口に入れた瞬間、弾けるように甘さと酸味が広がった。
これ、おいしい。
けど、味はパイナップルっぽい。
見た目がリンゴなのでさわやかな味わいをイメージしていたので脳がバグる。
なんだこれ?
ほかの果実も手に取る。
ナシっぽい見た目をしているのに、スイカ味のものもある。
あるいは、モモのような見た目でバナナっぽい味と食感のものもあった。
しかも、同じ見た目でも味が違うものもある。
ただ、どれも非常においしい。
今しがたトレントの枝をぶっ飛ばして手に入れたもぎたての新鮮なフルーツなのに、しっかりと熟して味が最も乗った状態になっている。
「これ、名前を付けるとしたらランダムフルーツって感じかな? おいしいから、ほかのトレントからもどんどん狩っていくか?」
――これなら、戦う価値がある。
見た目とのギャップが激しくて評価が分かれてしまいそうな気もするけれど、それはそれで楽しいし、目をつぶって食べればそこらの高級フルーツに匹敵するようなおいしさだ。
あのトレントが当たりだったというわけではなければ、このサバンナにはいくつものトレントの木が視界内には見えている。
果実がないやつもあるだろうけれど、果実付きのは積極的に狩っていってもいいかもしれない。
僕は手に入れたトレントの枝と果実をリュックの中の白龍の尻尾から作った革袋に入れて、移動を開始する。
甘い果実をかじりながら、僕は次の獲物を探した。
そこからは、見かけるたびに果実を回収し、さまざまなフルーツを堪能しながらもダンジョン内を歩き続けた。
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