308.同年代の友達を大切にしたい
お昼少し前まで眠り続け、起きた途端に昼食が提供された。騒がしい窓の外を眺めながら食事を摂る。どうやら使節団の一つが帰るらしい。
「カペル共和国は朝早く立ったはずだから、アードラー王国か?」
「うん? アードラー王国は明日の朝だったぞ。そのあとでゼークト王国。ってことは……」
ネロとミロは互いに聞きかじった話を持ち出す。アードラー王国の名に、ユーディットを思い浮かべたラファエルはパンを口に放り込んだ。食べているから会話に加われない。そんな態度に、双子は何か察したらしい。
「なあ、ゼークト王国の第二王子は親戚だよな?」
「巻き込んだら、今夜も一緒に遊べるかも」
悪だくみの上手な二人に、ラファエルは紅茶でパンを流す。きちんと飲み込んでから口を開いた。
「イグナーツ王子殿下? 僕は親しくないんだよね。おじい様やおばあ様なら……」
「親しくなるために呼ぶの」
「そうそう!」
双子王子は引く様子はなく、ラファエルは「聞くだけなら」と承諾した。これが公的な会話なら、きちんと断る。だが私的な時間なら構わない。祖父母からラファエルが学んだ一つが、公私の切り分け方だった。
「おじい様に相談するよ」
微妙な顔をしたネロに対し、ミロは「いいと思う」と賛成した。やっぱり性格が違う。表情も個性が出ている。話が決まれば、食事を楽しむだけ。育ち盛りの子どもらしい量を平らげ、満足して立ち上がった。
扉の外にいたカールに「待たせちゃった」と苦笑するラファエルは、頭にぽんと置かれた手に従兄を見上げる。怒っているかと思ったのに、なぜか嬉しそうに笑っていた。
「いい友達が出来て良かったな」
「うん」
恥ずかしいような擽ったいような、曖昧で言葉にならない気持ちを持て余す。同年代の友人は初めてで、お泊りも楽しかった。もう一日だけ、とエッカルトに申し出るつもりだ。その際にイグナーツも誘う。難しいミッションを託されたラファエルは、それでも楽しかった。
頼られたのが嬉しい。友人と過ごすのはもっと楽しい。浮かれた足取りで、案内の侍従についていく。カールに食事はどうしたのか尋ねたら、扉の前にずっといたわけではないと返ってきた。ロイスナーから同行した騎士と交代しながら、扉を守ったらしい。加えて、双子の護衛もついていた。
「新王陛下は、弟を大切にする人なんだね」
「兄弟ってのはそんなもんだろ」
雑談に、侍従が一瞬振り返る。だが無言で前を向いた。何か言いかけた? そう思うものの、ラファエルは追及しない。察してほしいだなんて傲慢だな、と思う程度だった。立場があって口にできないなら、無視を貫くべきだ。それが出来ないなら、王宮の使用人としては失格なのだから。
ラファエルが身に付けた知識や常識は、王族らしい振る舞いとなって表れていた。




