307.互いに初めてのお泊り会
ラファエルは浮かれていた。友人とのお泊り会は初めてだ。ネロとミロは双子でそっくりな顔だが、性格や話し方、仕草に癖がある。見分けられるようになると、なぜ周囲が同じ「双子」という単語で話すのか不思議だった。
個性的でまったく違う二人なのに、と。
「ネロ、これを着るの?」
「そうさ、絶対に似合うぜ」
勧められたのは、ワンピースのような服だった。下にペチコートに似た半ズボンを着用するらしい。よく見れば、ワンピースの裾が腰まで切れている。スリットと呼ばれる裂け目は、きちんと縫われて処理してあった。小さな刺繍も施されている。
「民族衣装なんだけど、着てくれるかな」
ミロは少し遠慮がちに、でも期待を込めた目でラファエルを見つめる。二人も同じような服を着ているため、確かに民族衣装なのだろう。外交の場では着ていなかったが、どんな場面で着る服なのだろう。着替えてみたら、想像より楽だった。
寝転がっても引っ張られないし、何より軽い。驚いたのが通気性の良さだった。べたべたしないさらりとした生地も気持ちいいし、形も動きやすかった。
「これ、いいね」
「気に入ったなら持って帰るといいよ。えっと……もう一人いたよね? えっと」
ミロが思い出せないと唸る隣で、ネロが「姉だっけ?」と答えをはじき出す。そうだと答えるラファエルに、二人は土産にするよう勧めた。
「喜びそうだから、頼んでもいい?」
双子の厚意が嬉しくて、ラファエルは素直にそう伝えた。大喜びしたネロが、ガブリエルの身長を尋ねる。このくらいと示したら、少し大きめに作るよう侍従に伝えていた。
「色とか装飾はお任せ?」
ミロの注文に、ラファエルが淡い色がいいと伝えた。姉ガブリエルは黒髪に赤い瞳だ。淡い色のほうが映えると考えた。その意見に、ネロが追加注文をする。濃淡、両方用意してはどうかと。
「ラファエルの分ももう一着作ろうぜ」
「そうしよう」
ネロとミロへ「急がせると悪いから」と遠慮したところ、ラファエルは二人に飛び掛かられた。転がるようにベッドに倒れ込む。
「こういうのは、礼を言って受け取るもんだぜ」
「そもそも縫う部分は少ないし、ウテシュの王宮の針子は十人以上いるんだから」
既製品を仕立て直す方法もあると教わり、ラファエルはそれならと受け入れた。わいわい騒ぎながら、ベッドの上で転がる。一日限りの同室を、どうやって明日も認めさせるか。そんな議論もしてみた。
「シェンデル家のじいさんが厄介だ」
「おじい様は優しいから大丈夫、僕はおばあ様のほうが難しいと思うよ」
ネロに反論するラファエルはうつ伏せで肘をつく。背中に乗っかるミロが「年とっても綺麗な人は怖いんだって」と口にした。なるほどと納得しながら、話が逸れていく。ほかにも綺麗で怖い人のこと、兄や姉のこと、互いに様々な話が尽きない。
空が白み始めた頃……ようやく三人は眠りの中にいた。




