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わたくしは何も存じません  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


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206/208

206.王位継承に価値はない

 立ち直るきっかけを掴んだウテシュ王国とは裏腹に、アードラー王国は混乱を極めていた。愚かな王太子を追放したあと、貴族の間で継承権争いが起きたのだ。


 公爵家から伯爵家まで。高位貴族と呼ばれる爵位を持つ家が、誰が敵だ味方だと騒いで右往左往する。その様を見る民の視線は冷たかった。誰が王でも構わない。自分達を飢えさせず、重い負担を押し付けない人物が望まれた。


 民の感情を置き去りにする貴族を、教会が静かに見つめていた。選別を行っているのだ。女神アルティナのやり直しが行われた以上、神々の力と関与は疑うべくもない。相応しくない人物が王として立つなら、教会はその全勢力で叩き潰すつもりだった。


「偉い人ってのは懲りないねぇ」


 苦笑いするジーモンは、やれやれと首を横に振る。


 国王グスタフはしばらく沈黙を貫いた。その意味を知るのは、一部の側近のみだ。本人が望まないにもかかわらず、その一部に含まれてしまったジーモンは階級章を指先で弄る。騎士団長補佐を示す階級章は、妥協の産物だった。団長だけは嫌だと拒んだ結果である。


 団長の座が空席なので、事実上の団長だった。もちろん、ジーモンは「補佐」を強調しながら仕事に向かう。


「移住ばかりで国が傾いてるのに、誰もいない王国の玉座なんて座りたいかねぇ……」


 呆れたと呟くジーモンに、宰相が苦言を呈する。


「まだ滅びてはいません」


「時間の問題では? 何しろ、ロイスナー公国にも断られましたし」


 国の譲渡の話だろう。正確には王位を譲渡しようとして断られた。負債しかない国を得る利点が示せないのだから、断られるのが当然とも言える。他国に縁者のある貴族は、爵位を返上して移住を選んだ。


 ウテシュ王国、ゼークト王国、カペル共和国……どこも攻め込んでこない。アードラー王国に価値なしと明言されたも同然だった。


「まあ、ここまで落ちれば逆に覚悟が決まるってもんで」


 相変わらず口の悪いジーモンだが、グスタフ王は彼を重用した。一番の理由が、民の目線を知っていること。次におべっかを使わず正直であること。本人が出世を嫌がることも、正直さの証と受け取られていた。


「女神様も、どうせならドカンと滅ぼしちゃえばよかったんすよ」


 平然と女神批判をするのかと慌てる周囲をよそに、ジーモンは平然としている。


「残したなら、残す意味があったんでしょう。足掻いて認めていただく、これしかないっす」


 悪態ばかりの男の言葉に、宰相や大臣が絶句した。だがグスタフ王は大笑いしたあと「では、働かせるとするか」と大鉈を振るう。貴族の爵位を見直し、王位争いを始めた愚者を切り捨てた。代わりに国へ貢献した者を、文官武官問わずに取り立てる。その中には商人も含まれた。


 数年後、アードラー王国は新たな王朝への移行を目指して動き出す。血縁による王族支配を脱却し、カペル共和国とも違う「民による政」の看板を掲げて。国の形、名称、制度、すべてを変革していくことになった。

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― 新着の感想 ―
民による政だから立憲君主制なのかな…あの愚かな王太子たちのような者たちが二度と出ないような国になって欲しいですねえ
今までの王政から、立憲君主制あたりへの移行かな? 新たな王朝ってことは……
 共和制でもなく…? 議会制?
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