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わたくしは何も存じません  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


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207/208

207.ルイス王国の信仰の源へ

 ルイス王国は独立した国であると同時に、神々の集う地としての役割も果たしてきた。年に一度、他国の神々が休みに訪れる。時期はばらばらで、それぞれの神が己の望みで羽を休める。そう伝えられる岬は、人の立ち入りが厳しく制限される神域だった。


「本当に入っても?」


「もちろんです。神々の意に沿わぬ者は弾かれますのでご安心ください」


 第二王子アードリアンの案内で、岬の前に立つ。神域を示す白い紙が揺れる縄を見上げ、ガブリエルは不安に駆られた。振り返ると祖父母が数歩後ろで立ち止まる。無理に手を伸ばそうとしても、足を踏み出しても、ばちっと軽い痛みを感じて動けなくなった。


「私達はここまでね」


「俺もだ」


 叔父のアウグストも足止めされた。シェンデル公爵夫妻の二歩先だが、それ以上は無理だと首を横に振る。ルイス王国の王族であるためか、アードリアンはガブリエルの隣に立っていた。


「私は資格がない気がしますが」


 恐る恐る訴えたのは、ガブリエルと手を繋いだソフィーだ。なぜか真横に立つ権利を得てしまい、困惑しているらしい。ガブリエルと手を繋いでいるからか、それとも彼女自身の素質か。弾かれる様子はなかった。


「ご案内したいのですが、私もここまでです。この先はお二人でどうぞ」


 促され、ガブリエルはソフィーを見上げた。姉のように慕うソフィーが一緒なら、大丈夫。怖くないと足を踏み出した。神域に入るために縄を越える。


 ふわっと世界が変わった。見た目の変化ではない。肌がそう感じるのだ。気温が下がった気がして、ぶるりと身を震わせる。繋いだ手の温もりを確かめるように、強く握り直した。しっかり握り返され、ほっとする。


「一歩ずつ」


「ええ」


 二人で息を合わせ、ついでに歩調も合わせた。一歩進んで足を揃え、また踏み出しては揃え直す。進んだのは数歩だと思うのに、振り返った後ろは森に閉ざされた。前には一本の道が開かれている。


『おや、天使のお出ましか』


『どこの子だい?』


『アルティナ様の天使……いや、テアリス殿の天使でもあるのか』


 男女どちらとも区別のつかない声が聞こえ、ガブリエルは声が漏れそうになる。慌てて手で口を覆った。この岬へ来る前、国王に注意されたのを思い出す。神域は禁息(きんいき)である。呼吸は構わないが、息と見做される発声はしないように、と。


 息を禁じるから人が神域に入れる。彼らの教えと信仰を穢すわけにいかない。ガブリエルは顔を上げて、声の主を探した。この場で声を発するなら、おそらく休みに来られた神々であろう。


『なるほど。これはまた極上ではないか』


 一柱の男神が目の前に現れた。周囲の森の闇が凝ったように、突然現れた青年姿の神は笑顔で手を差し伸べる。


『この手を取るがよい』


 ぞくりと背筋が冷える。ガブリエルはゆっくりと視線を逸らし、俯いて首を横に振った。

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― 新着の感想 ―
聖域!凄い!信仰心が強いから、色々素晴らしい形になってますね!地震の時、避難もアッサリ済んだし、町は無事だったし、ガブリエルさんのこと信頼してくれるし! ガブリエルさん、誘拐未遂!?人の天使を連れ去る…
気のせいか、どう見ても俺様系で、浮気者な雰囲気がプンプンと……(笑) というか、そもそもよそのカミサマの天使に手ー出すんじゃねーよと(笑)
 異世界出雲に異世界ゼウス(恐妻家なのに度々浮気しては浮気相手を人間以外に変化させられても懲りなかった最高神)? 或いはエロス?
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