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わたくしは何も存じません  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


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202/203

202.大地創造のような景色

 海の女神テアリスを祀った神殿は、お(やしろ)と呼ばれていた。口々に「お社の中なら安全」と民が口にする。王族も貴族も平民もなく、すべての民がテアリスのお社へ集められた。


「大きいのね」


「避難場所を兼ねて造られたのだろう」


 ガブリエルの感嘆の声が高い天井で響き、目を丸くしたアウグストの答えが返る。山が割れると聞いたが、お社は山に張り付く形で造られていた。この山が崩れる心配はないのだろうか。そう懸念するも、すぐにガブリエルは己の考えを否定した。


 女神アルティナ様とテアリス様、どちらも天使として私を慈しんでくださる。二柱の神々が告げた神託ならば、この場所は安全なのだ。ガブリエルは深く息を吸ってゆっくりと吐いた。


 全国民が入るには狭いのでは? と懸念されたが、()()は複数存在するらしい。祈りを捧げる場所として、高台に造られたお社は「分社」という形を取って六ヶ所あった。それぞれに近いお社へ避難するのだ。


「おお! こちらへ参られよ、天使殿」


 アードリアンとよく似た壮年の男性が声をかけてくる。エッカルトがやや深く腰を折って一礼した。その挨拶で、国王という地位にある男性だと理解する。ガブリエルは祖父よりやや高い位置で頭を下げた。一国の公女として立つ以上、あまり遜ることはない。


 こういった地位や序列に関する知識は、相応に叩き込まれていた。


「ルイス王国、国王陛下に拝謁いたします。ロイスナー公国、ガブリエルにございます」


 続いてソフィーやアウグストも名乗りを上げ、すでに顔見知りのシェンデル公爵夫妻を含めて全員が挨拶を終えた。堅苦しい礼儀作法は要らぬと手招きされ、国王に近づいたガブリエルは温かな手に包まれる。ガブリエルの左手を両手で包む形で、国王は額を当てた。


 王たる人物が、他国の王族に頭を下げることなどない。だが、女神が愛する天使であれば話は別だった。つらい思いをしたことを、女神からの神託で受け取っている王は静かに切り出した。


「我らは『前回』を知っている。天使の未来に輝くばかりの幸福が満ちるよう、祈らせていただいた」


「……っ、ありがとう、ございます」


 胸に何かが満ちて、溢れるように涙が落ちた。意図せず流れた涙はすとんと落下し、やや俯いたガブリエルの手を濡らす。


「女神テアリス様の加護をお持ちのようだ。ならば、ここで偉業を共に眺めるとしよう。アードリアン、席を用意してくれ」


 承諾を伝えるアードリアンの指示で、あっという間に敷物が広げられた。民もすべて床に敷物だけで座っている。同じ目線で座り、用意された飲み物を口にした。


 大地が揺れ、空が曇り、風が強くなる。神々による大地創造とは、このような景色だったのだろうか。開けた視界の先で、海が大きくうねった。

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― 新着の感想 ―
この世界の大地創造はどんなんだろう? 泥の海に矛を突っ込んでグルグルやって大地を引き上げた日本神話系か、「海の水は一つところに集まり、乾いたところが現れよ」と神が命じた聖書神話系か……はたまた?
地味に前回を覚えてる他国の人間は初か?
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