表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたくしは何も存じません  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

200/206

200.疑うことは心を曇らせます

 アードリアンにどう伝えるか悩み、誰が聞いたと言わずにそのまま伝えた。エッカルトは、アードリアンの人柄に懸けたのだ。もし彼が否定するなら、自分が盾になればいい。


 クラーラの意見で、ガブリエルは旅の疲れで寝込んでいると話してあった。今になればその布石が生きてくる。本当に妻には頭が上がらないと、エッカルトは顎を撫でながらアードリアンの返答を待った。


「女神テアリス様が、そのような……」


 嫌な反応だ、そう思った直後にアードリアンは大きく息を吐いた。両手の指を絡めるように組んで、祈りを捧げる。


「海を司り、我らに豊かな恵みを与えてくださるテアリス様のお言葉なら……疑う余地はありません。すぐにでも避難の準備をさせましょう。何もなければ、それでいいのですから」


 予想外の反応に、エッカルトは瞬きして固まった。先ほどの態度で、彼はこちらを疑っていると判断したのに。真逆の対応を口にする。


「疑わぬのか?」


「シェンデル公爵閣下が嘘をつく理由はありません。それに、ご令嬢の一人は女神様の加護をお持ちです。疑うことは心を曇らせます」


 海の女神テアリスの教えを守るルイス王国の民にとって、彼女の名を使った嘘は存在しない。もし女神の名を騙って嘘を吐けば、即座に命が絶たれると信じているからだ。他国と違い、様々な自然に神が宿ると考える多神教のルイス王国は、多様な考え方や信仰を受け入れる土壌があった。


「ご令嬢にお礼をお伝えください。我らの巫女であっても数日寝込むほどの予言ですから」


 立ち上がるアードリアンは、これから王城へ戻って仔細を伝えるらしい。この数日でルイス王国は、エッカルトにいくつかの貿易案を出していた。それも変更を余儀なくされるだろう。


「迎賓館からの避難は、騎士に手配させます」


 深々と一礼したアードリアンは、大急ぎで馬に跨って王城へ向かう。玄関先まで見送り、エッカルトは大きく肩で息をした。疑われるだろうと気を張っていたのが、一気に抜ける。信じてもらえて安心した部分と、こんなに無防備な国が無事であったことに疑問を覚えた。


 他国に騙され侵略されるのでは? と要らぬ心配をしてしまう。いや、この国ならば神々が(こま)やかに手を差し伸べて守るか。女神の名で口にされた内容を信じると言い切ったのは、過去にそうやって騙しに来た使者が撃退された経験がありそうだ。


 ぶるりと肩を震わせ、自分の吐いた言葉を確認する。万が一にも間違って伝えていないか、一言一句思い出そうとした。だが普段からそういった会話を心掛けているのに、曖昧になっていく。


「まだまだ及ばぬか」


 苦笑いして、女神アルティナに祈りを捧げた。この信心深い国をどうかお守りください、と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
信仰心の強い人で良かった!普段から神様達が護ってくれてそうですね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ