187.祖父の物騒な狩りの成果
髪色や出会った場所、顔立ちなどの特徴を並べて伝える。だが、騎士というのは似たような外見をしていた。目立たないためもあるが、ダークブラウンの髪はアードラー王国に多い。制服を着崩すような輩なら王宮へ入れないので、全員が品行方正に着こなしていた。
「まったくわからん」
「私もこれ以上どう伝えたらいいか、わからないわ」
お手上げよと溜め息を吐いたガブリエルに、アウグストも唸る。ただでさえ顔を覚えない男だ。特徴を伝えられても、まったく思い出さなかった。ヴィリがいれば、心当たりの名前が出てきただろう。お互いに同じ感想を抱きながらも、口に出さなかった。
「見ればわかるの?」
クラーラの問いかけに頷く。今度こそ顔を見れば、この人だと指させる。困ったわ、とクラーラは頬に手を当てた。これが愛する孫でなければ、街中を護衛付きで歩いて見つけてもらえば済む。けれど、二度も誘拐される恐怖を味わわせたくなかった。
用意されたお茶が冷めていく。そこへ戻ってきたエッカルトが、大きな声で場の空気を変えた。
「もう一匹捕獲したぞ!!」
「まあ、狩りをしてらしたの?」
混乱しているときに悠長な。呆れた顔でクラーラが叱る声を出すと、慌てたエッカルトが「違うぞ、誘拐犯らしき男をもう一人捕まえた」と言い出した。ちょうどその話で行き詰っていた四人は、ぱっと顔を上げる。エッカルトへ視線が集中した。
「……おじい様、会わせて」
「本当か?! よし、俺に任せろ」
ガブリエルの覚悟を決めた声に、元気なアウグストが被せる。一緒に行こうと頷く二人の後ろで、ソフィーが口を開いた。
「お邪魔でしょうが、私もご一緒させてください。盾になるくらいできます」
とんでもないと首を横に振るガブリエルだが、ソフィーの決意は固い。自分が離れた隙、それも見送りに立った直後に事件は起きた。覚悟を示したソフィーに、アウグストは「構わんぞ」と頷く。
「ここで止めても、こっそりついてくるだろう。そのほうが危険だ」
ソフィーの性格を見抜いた発言に、クラーラも「そうねぇ」と渋々同意した。エッカルトは「なぜ全員で行く話になる?」と首を傾げるも、妻に理由を聞いて目を丸くする。
「なるほど、アードラー王国の知った顔か……あの国は厄介ごとばかり持ち込む」
そこで黙り込んだエッカルトの頭の中は、物騒な言葉が溢れている。なんとなく察したものの、誰も指摘しなかった。アードラー王国が発端で『前回』の女神介入が起きたのは、間違いようのない事実だから。今回もまたやらかしたのか、程度の認識だった。
『前回』をやり直したからこそ、他国の膿も吐き出されている。全体の流れを見通せる人はおらず、ゆえに神々のみぞ知る事実であった。




