表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたくしは何も存じません  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

182/184

182.父親同士の顔合わせ

 メルテンス子爵は、ベッドの上で身を起こして対応した。恩人の親族とあれば、丁寧に接したいと自ら申し出た。


「楽にしてくれ。これで体調を崩したら、ソフィー嬢が泣くぞ」


 娘の名を出されたメルテンス子爵は、アウグストに一礼してからクッションに身を沈めた。屋敷を借りた礼を口にしたアウグストに、子爵はゆっくりと首を横に振った。


「いえ、こちらこそ……シェンデル公爵閣下と奥方様のお陰で生きております」


 シェンデル公爵家の名が出て、ここは別邸だったと納得する。こういった事情を理解せず動くのは、アウグストらしい。仕事の面では副官のヴィリが対応してきたので、ここまでボロは出なかったが。


「バーレ侯爵閣下」


「アウグストでいい」


 呼ばれ慣れない肩書きに、苦笑いしたアウグストは首を横に振った。


「ソフィーのこと、よろしくお願いいたします」


 丁寧に頭を下げる様子に、アウグストは首を傾げる。すぐに思い至った。婚約話のことだろう。


「我が息子二人のどちらか、ご令嬢のお気に召すなら縁を結ばせてほしい。だが強要はしない」


「はい。公女殿下の話し相手の仕事も頂いたと聞いております」


 どこまでも丁寧な子爵の口調に、むずむずするアウグストがシャツの襟を緩めた。明らかにサイズの違う服を纏うアウグストの姿に、メルテンス子爵の口元が緩んだ。


「申し訳ありませんでした。私の服では小さかったですね」


 ようやく口調が崩れる。アウグストはにやりと笑い「そのほうがいい」と肯定した。鋭い犬歯が覗いて、悪い顔になる。そんなアウグストに、メルテンス子爵は好感を抱いた。飾らず、まっすぐで強い。病弱な自分が子供の頃に憧れた、騎士そのものだった。


「失礼いたします」


 侍女のノックに入室を許可した子爵は、現れた可憐な少女に目を見開く。慌てて姿勢を正そうとして、アウグストに止められた。


「ロイスナー公国のガブリエルですわ」


 挨拶を交わす間はぎこちなさが前面に出たが、すぐに子爵も肩の力を抜いた。飾らない二人のやり取りは、父娘の会話に似て柔らかい。ソフィーの話を聞き、娘が幸せなのだと判断した父は胸を撫で下ろした。


 部屋を辞すのを待っていた騎士に呼び止められ、アウグストは屋敷の外へ向かう。その途中でおっとりした侍女に呼び止められ、乾いたばかりの服に袖を通した。やはり体に合う服は違う。意気揚々と出ていく叔父を見送ったガブリエルは、あふっと欠伸が漏れた。


「少し休ませていただくわ」


 老いた侍女について、客間で横になる。皴の刻まれた手が、丁寧に上掛けを直した。温かく安心な場所で、ガブリエルは目を閉じる。外から聞こえた物音を子守唄にしながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
外からの物音?来客ですかね? ソフィーさんのお父さんも元気になってきてて、良かったです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ