181.まず体を温めるのが先決だ
焚き火で温まりながら、ぽつぽつと情報交換をする。寒さで紫色になったガブリエルの唇は震えも収まり、色も戻り始めていた。筋肉質なアウグストの体温が高く、焚き火の熱が及ばない背中を温めたことも影響している。
逃げた一人は、驚くほど早く見つかった。周辺の茂みから捜索が始まり、やや離れた大木の陰を探っていた。その騎士に枝の上から斬りかかった男がいる。それが逃げた男だったらしい。
捕獲された一報が入り、そわそわするアウグストだったが、ガブリエルを置いていけない。自分もびしょ濡れの状態でローブに包まり、護衛対象である姪を膝に乗せて我慢した。
二名の騎士が駆け戻り、風呂などの準備をさせていると聞いた。捕獲が終わったのなら、あとで突き詰めればいい。アウグストはガブリエルを抱き上げて馬に近づいた。濡れた服を着たままより脱いだほうが温かいのでは? と愚かなことを考える。
「叔父様、脱いだ男が馬で突進してきたら怖いわよ?」
ようやく震えが収まってきたガブリエルに指摘されたアウグストは、それもそうかと諦めた。騎士服の上から羽織ったローブで、ガブリエルも包む。馬の背では横抱きは不安定なので、安定する形で跨ってもらった。予備の毛布で足元を隠す。
地面が平らに均された牧場や町中ならばともかく、木の根が剝き出しの森の中を進むには危険だ。説明をしっかり聞いて頷いたガブリエルは、素直に跨った。後ろで体を支える叔父アウグストの体温のお陰で、寒さは半減している。
森を抜けて建物が見えると、ガブリエルはほっとして体の力を抜いた。建物はメルテンス子爵が療養する別邸で、すでに迎え入れの準備が整っている。駆け寄った年配の侍女がガブリエルを受け止めるも、運ぶのは無理だった。
馬を下りたアウグストが抱きかかえ、部屋まで案内するよう頼む。侍女が先を歩き、用意された客間へガブリエルを導く。入り口でガブリエルを立たせると、アウグストも別の客間に案内された。そこで風呂に入り、きゅっと寄った眉間を解す。皴が消えなくなりそうだ。
体を温めたアウグストは、用意された着替えを借りた。袖と裾が短いが、仕方ない。服は洗濯して乾燥中だった。アイロンで乾かすと聞いて、そんな方法もあるのかと驚く。
「さて、メルテンス子爵殿にご挨拶とお礼をしたい」
入浴や着替えを手伝った侍従に声をかけ、アウグストは乾きかけの髪をかき上げた。




