第6話 追放する③
アクセルが去った後、シオンは軽くため息をついた。
シオンにとっても、このようにパーティからの事実上の追放を告げるのか気が重いことだ。しかし、シオンは全く悔いてはいない。自分の行為が間違ってはいないと確信しているからだ。
そもそも、シオンが仲間をパーティから追放するのはこれが初めてではない。実力や考えが合わない者を、今までに何人か追放していた。
それもやむを得ない事といえるだろう。
最初に組んだパーティメンバーが、みな同等の素質を持ち、目指すべき目標も同じならそれに越した事はない。だが、実際にはそのようなことは稀だ。
人によって持って生まれた才能は違うから、同じ経験を積んでも同じように成長するとは限らない。無視できない差が生じる事も当然ある。
そんな差が生じた時に、強くなれなかった者に合わせて仕事を選ぶつもりは、シオンにはない。本人が語ったとおり、そんな事をしていては、上は目指せないと信じているからだ。
そして、強くなった者にあわせて仕事を選べば、弱い者はついて来られない。足手まといになるし、最悪死んでしまう。
そのくらいなら、パーティから外した方が良い。シオンはそう信じていた。その考えに基づいて、今までに幾人かを追放していたのだ。
そのような理由で追放した最初の1人はシオンの親友だった。
いや、今や元親友と言うべきか。シオンと同郷で、故郷ではずっと一緒で、そして、冒険者になる為に連れ立って王都にやって来た男だ。
しかし、数年のうちにシオンとの実力に差が生じて、シオンに着いていけなくなってしまった。だから、追放した。
その追放された元親友は、今もこの王都で冒険者を続けており、たまに見かけることもある。しかし、当然ながらシオンとの関係は険悪で、無視するかそれとも憎しみを込めた視線を向けていた。
かつての親友とそんな関係になってしまった事はさびしい。だが、それでもシオンに後悔はない。
しばし沈黙してしまったシオンに、クリスタが声をかけた。
「シオン、大丈夫ですか?」
「ああ、もちろん。お互いに気分のいい話ではないが、必要な事だ。俺たちにとっても、アクセルにとっても」
「ええ、その通りです。ここから出て行ってもらうことは、彼の為でもありました」
そう告げるクレスタの声は悲しげだった。
クリスタが、アクセルに告げた言葉は概ね真実だ。アクセルの最近の行いに不快感を持っていたし、もはや恋愛感情はない。きっぱりと別れるべきだとも思っている。
しかし、決して憎んでいるわけではない。幼馴染としての情をなくしてしまったわけではなかったのだ。
先ほど、あえてきつい言い方をしたのは、自分への未練を残して欲しくないと思ったから。そして、実力にあわない冒険に参加して死ぬ事を避けたいと思ったからこそだった。
他のメンバー達も、実のところアクセルに同情的だった。しかし、情に流されて実力の劣る者を抱え込むつもりはなかった。
そしてまた、自分がアクセルと同じ立場になる事もありえると分っていた。
クリスタがそのことについても告げる。
「今後私も、シオンたちについていけなくなった場合には、アクセルと同じ事になる。それも理解しています」
「……そうだな、確かにその通りだ。
クリスタが俺のことを好いてくれるのは嬉しいし、俺もクリスタを愛している。だが、だからといって、情に捕らわれて、実力が合わなくなってもパーティメンバーのままでいさせるつもりはない。もしもクリスタの実力が、他の皆についていけなくなったなら、パーティからは抜けてもらうことになる。少なくとも冒険には連れていけない。
だが、それはお互い様だ。俺の実力が皆についていけなくなれば、俺が抜けることもありえる」
そこで、魔術師のユーゼフが会話に加わって来た。
「そのことは皆が理解していますよ。私達は仲良しでいたい集団ではない。上を目指したい者達です。一番弱い者にあわせて行動するなどありえない。だから、メンバー交代は起こりえることです。さびしい事だとは思いますが……。
しかし、それでも同時に信頼関係は築かなければならない。ならば、日頃から駄目なら駄目とはっきりと言い合えるようになっているべきです。そして、いざという時には割り切れるようになっているべきだ。私達は皆、そう理解しています」
他のメンバーも皆、その意見に賛意を示す。
それを受けて、シオンがまた告げた。
「そうだな。では、気を取り直して、当面5人で活動する場合の方針や戦闘時の隊形や戦術をもう一度刷り合わせよう。それから、追加メンバーの募集についても改めて検討したい」
「分かりました。私としては……」
そうして、シオンたち残ったパーティメンバーは今後についての話し合いを始めた。




