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第5話 追放する②

「え?」


 アクセルは思わずそんな声を出した。

 ――荷物をまとめるのはあなただけ――幼馴染である女神官のクリスタからそう言われても、直ぐには意味が分からなかったからだ。


「抜けるのはあなただけなの。私は、このパーティに残るわ」


 クリスタは続けてそう告げる。


「な、なぜ?」


「抜ける理由がないからよ。技量でも、心構えでも、私はこのパーティの一員に相応しい。

 そして、あなたと一緒に行く理由もないから」


「お、俺たちはずっと一緒だったじゃあないか!? それに、結婚の約束だって――」「そんな小さな頃の話をいつまでも持ち出さないで」


 クリスタはアクセルの言葉を遮ってぴしゃりと言い切った。

 そして、更に言葉を続ける。


「いい機会だから、はっきり言っておくわ。あなたとの結婚の約束は、正式に破棄します。私は、あなたと結婚なするつもりは、もう全くありません。

 私の気持ちは、もうとっくにあなたを向いていないの」


 そして、隣に座るシオンの方へ顔を向ける。

 その仕草によって、アクセルはクリスタの真意を知った。


「俺を捨てて、その男を取るのか!?」


「ええ、私が思っている相手はシオンです」


「その男の方が、俺よりも強いから、か? そういうことなのか」


「確かに、シオンはあなたよりもずっと強いけれど、それだけが理由ではないわ。

 シオンは、私を理解して、信頼してくれている。あなたと違って。

 前の戦いの時も、私ならオストロスと戦っても持ちこたえられると判断して任せてくれた。私の実力を正しく評価してくれたの。


 あなたは逆に、ヘルハウンドを倒した後、私と一緒にオストロスと戦おうとした。私が、1人でも大丈夫だから、もっと手強い敵と戦っているシオンを援護するようにと言ったのに、それを無視してオストロスと戦い続けた。私が信じられなかったの?」


「そんな事はない、あの時は、君の事が心配で――」

「嘘をつかないで。もし、私のことを心配していたなら、なぜ最初にオストロスを引き受けなかったの? 戦士としての力量だけなら、私よりもあなたの方が強い。普通なら、より強いオストロスをあなたが引き受けるべきよ。

 けれどあなたは、最も弱いヘルハウンドを攻撃した。どうして?」


「そ、それは……」


「弱い相手と戦いたかったのよね。強い敵から恐ろしい攻撃を受けたばかりだったから、本当はもう戦いたくなかったし、戦うにしても出来るだけ弱いものを相手にしたかった。だから、一番弱いヘルハウンドを狙った。あなたは、そういう人間。ただの臆病者よ。

 その生き方を全否定するつもりはないけれど、私はもう一緒に居たくはない。だから、ここでお別れよ」


「そんな、俺は……」


 アクセルはそう呟いて、他の者達の様子を見た。

 誰か、味方になってくれるものはいないかと思ったのである。

 だが、誰一人としてアクセルに好意的な視線を送るものはいない。

 シオンがまた告げた。


「当然、パーティの共有財産からお前の取り分は渡す。それがあれば、直ぐに食べるのに困る事はない。その間に、自分にあった仕事を見つけるといい」


「……」


 アクセルにはもう何も言えずに俯いた。

 シオンが言葉を続ける。


「繰り返しになるが、お前は、色々な意味で俺たちとはあわないだけで、それほど弱いわけじゃあない。自分の実力と精神性に見合った仕事は幾らでもある。お前がそうやって良い仕事を得る事を祈っている。

 ただ、今お前が使っている宿は、俺たちのパーティの名義で借りているものだから、そこからは出てもらう。出来れば今日中に、少なくとも明日の間には荷物をまとめてくれ。準備もあるだろうから、もう行ってくれ」


 アクセルは、打ちひしがれ、言葉もなく立ち上がると、シオンに言われた通りその部屋を後にした。

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