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第21話 遺跡探索開始

 事件の発端となったと思われる遺跡。それは、それほど時間をかける事もなく見つかった。

 トマーシュとその妻が、村の近くで最近その遺跡を発見したという事は、その少し前に発見につながるような何かが起こったという事だ。そうでなければ、とっくの昔に発見されていたはずなのだから。


 そう考えて、村で聞き込みをしたところ、トマーシュの妻がいなくなる少し前に、近くの山で地滑りが発生していたことが分かった。そして、その地滑りの状況をトマーシュ達夫婦が調査していた事も。


 その地滑りがきっかけで遺跡を発見したのかも知れない。そう考えて、その現場に向かったところ、案の定遺跡への入り口を見つけたのである。


 遺跡への入り口である扉は、一応埋め戻されて隠されていた。だが、熟練の冒険者であるシオンの目を誤魔化すことは出来なかった。

 シオンが不自然な個所を発見し、ゼインと2人で掘り起こしたところ、金属製の大きな扉が現れたのだ。

 扉は施錠されておらず開けることが出来た。そして、扉の先には広い通路が続いていたのである。


 その通路の入り口からほど近い場所に、床が下から突き破られた跡があった。床の下に相当に広い空間があり、そこに配置されていた何かが床を突き破って通路に上がって来たように見える。


「ここで、戦いが起こったようだ。床を突き破って現れた存在と戦いになったのかな?」


 その周りの状況を見聞したシオンがそう告げる。

 “治療師”もその意見に賛同した。ちなみに“治療師”は、遺跡に入ったところでフードを外し、シオンとゼインには白髪の品の良い老婆のように見える顔を顕にしている。


「恐らくそうだろう。通常は床下に配置され、何らかの条件を満たした時だけ、現れて攻撃する。そんな設定の番兵が置かれていた。といったところか。

 そんな番兵を設置できるとすれば、まず間違いなく古代魔法帝国時代、それも後期だろう。そして、通路全体の様式も古代魔法帝国後期のもの。ここが当たりである可能性は高い」


 古代魔法帝国は今から1000年以上も前に滅びた強大な帝国で、現在を遥かに超える魔術が普及していた。そして、その後期にはデーモンの召還も盛んに行われていた。

 つまり、この場所は“治療師”が想定する、デーモンに関係する遺跡の条件が揃っているという事になる。


 シオンが疑問を述べる。


「これが古代魔法帝国時代の遺跡だとして、なぜトマーシュ達は中に入れたのでしょう? 入口の扉は施錠されていなかったのでしょうか? 古代魔法帝国時代なら、魔法で扉を開かないようにすることも可能だったはずです。入り口を地中に埋めて侵入者を拒むくらいなのですから、扉は開かないようにしておくべきだと思いますが?」


「単純に魔法の効果が切れたのだろう。魔法帝国が滅びてから1000年以上が過ぎている。一部の魔法の効果が切れてもおかしくはない。事実、魔法帝国時代の封印が、さしたる理由もなく解かれて魔物が解放されるという事件も、それなりに起こっている」


「確かに、それもそうですね」


「そういう事だ。しかし、そう考えると、この床下の番兵も正常には機能しなかった可能性もあるな」


 そこで、ゼインが口をはさんだ。


「そんな事より、先に進もうぜ。見ろ、先に進んだ足跡が幾つも残っている。この足跡の上を進めば、罠にはかからないはずだ」


 確かに、周りには多くの足跡があり、その中のいくつかが奥へと続いている。しかも、その一つは明らかに人間のものよりも大きい。“治療師”のいう“番兵”のものだろう。奥へ逃げた何者かを“番兵”が追った。そのように推測される状態だ。

 “治療師”がゼインに答えた。


「それも、一理ある。警戒は怠るべきではないが、少なくとも足跡が残っている範囲は歩けるとみて良いだろう」


「……そうですね。先に進みましょう」


 シオンもそう言って同意した。


 3人は、シオンが先頭に立ち、次に照明用の魔道具を手にした“治療師”が続き、背後をゼインが警戒しながら進む。という隊形で、足跡の上を踏んで通路を進んだ。

 “治療師”が持つ照明用の魔道具は、50㎝ほどの長さの棒で、一方の先端に水晶球が付いており、その水晶球から光を発して全方位を照らすというものだ。かなり高性能で、辺りは明るく照らされ、動くのに何の支障もない。


 通路はずっと一本道だった。しかも、3人共念のため警戒していたが、罠が設置されている気配もない。


「何かを隠したいなら、なんで迷宮にしたり罠を置いたりしていないんだ? まあ楽でいいが」


 ゼインがそんな問いを発する。

 また“治療師”が答えた。


「迷宮にする、罠を設置する。と、口でいうのは簡単だが、実際に施工するとなる相当の手間だ。この遺跡を作った者は、そこまで手間をかける余裕がなかったのだろう。あるいは、入口を隠して番兵を置くだけで十分と思ったのか」


「そんなものかな?」


「ああ、あり得ない事ではない」


 と、そこで、シオンが後ろの二人に告げた。


「警戒してくれ。もう少し先で広間になっているようだ。広間には何か、かなり大きな物がある」


「承知した」

「ああ、分った」


 “治療師”とゼインは、そう答え、実際に気を引き締めた。


 少しして、3人はその広間に到着した。広間の真ん中付近にはアイアン・ゴーレムの残骸が横たわっている。


 シオン達3人は、注意しながら広間の中に入り、少し離れたところからアイアン・ゴーレムの残骸を見聞しつつ話し合った。


「大きな足跡は、間違いなくこのアイアン・ゴーレムのものだ。

 つまり、これが入り口近くに配置されていた“番兵”でしょうね。そして、ここまで追いかけて来て、倒された」


 シオンがそう告げ、 “治療師”が言葉を返す。


「だろうな。加えて言えば、最初からアイアン・ゴーレムを倒せる実力があったなら、入り口付近で倒せばよかった。にもかかわらず、ここまで逃げて来たという事は、最初は倒すだけの力は無かったということだ。そして、この広間で力を得て、初めてアイアン・ゴーレムを倒すことが可能になった」


 ゼインが、言葉を重ねた。


「要するに、ここにそのトマーシュとかいう奴を強くした原因があった、ってことだな。そして、アクセルとかいう奴を強くした原因も。

 まあ、面倒な番兵役のゴーレムが倒されているのは好都合だ。早速調べてみるか」


 そして、アイアン・ゴーレムの方へ向かおうとする。

 だが、シオンが鋭く警告を発した。


「待て! ゼイン! 何かいる」

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