第11話 追放される
「ッ!!」
敗北の判定を受けたシオンは、悔しさに歯噛みする。
アクセルが強くなったのが事実であるとすれば、負ける可能性もありえる。と、そう思ってはいた。だが、実際に負けてしまえば、悔しいものは悔しい。
それに、これで多くの者が不当な行いをしたのはシオンの方だと認識してしまう事だろう。耐えがたい恥辱だし、実害も生じてしまうはずだ。実際、観客たちの多くはシオンに向かって、好意的とは言えない視線を送っている。
今後の事を考えると、暗澹たる気持ちだった。
しかし、そんな思いよりも遥かに衝撃的な出来事が直ぐに起こった。
シオンに向かって声がかけられる。
「失望しましたよ、シオン」
同行していた魔術師のユーゼフの言葉だった。
しかし、今までに聞いたことがないほどの冷たい響きを帯びている。
シオンがユーゼフの方を見ると、ユーゼフが軽蔑したかのような視線を向けていた。
ユーゼフだけではない。その近くにいるクリスタ。今ではシオンの恋人であるクリスタもまた、冷たい表情を浮かべてシオンを見ていた。他のメンバーも同様だ。
ユーゼフが言葉を続ける。
「あなたのような、卑怯な弱者とは、もう一緒にやっていけません。私は抜けさせてもらいます。前から言っていたとおり」
「私も、もう、あなたと共に生きる気にはなれないわ。さようなら、シオン」
クリスタもそう告げる。
余りにも突然の別離の言葉だった。
他のメンバー達も、次々とシオンから離れ、パーティを離脱する事を告げる。
そんなメンバー達に、アクセルが声をかけた。
「お前ら、その屑野郎から離れるなら、俺のパーティメンバーにしてやってもいいぞ。どうする?」
「是非お願いします」
「私も、改めてお願いするわ。アクセル。前のことはごめんなさい。私が間違っていたわ。やっぱり、私にはあなたしかいない……」
ユーゼフとクリスタが次々とそんな事を述べる。
この時、もしもシオンが冷静だったなら、今のやり取りに不自然なものを感じただろう。ユーゼフやクリスタたち、パーティメンバーの様子が、明らかに普通ではない。まるで、操られているようだ。と、そう思ったはずだ。
しかし、シオンは冷静ではなかった。敗北の衝撃と、余りに突然な拒絶の言葉に驚き、大いに動揺してしまっていたのである。
「お前達、なんで?」
シオンは確かに自分が仲間達から追放される場合もありえると思っていた。しかし、今の状況は、余りに突然すぎる。シオンの理解も感情も追いついていなかった。
そんなシオンを尻目に、パーティメンバー達はアクセルの下に集まり、何やら親しげに話しこんでいる。
そして、ユーゼフがシオンの方に視線を向け、言い放った。
「もちろん、パーティの共有財産から私たちの取り分はいただいていきます。残りの金があれば、即座に生活できなくなる事はない。その間に他の仕事でも探すのですね。
あなたでも、仕事を選ばなければ働き口を見つけることも出来るでしょう」
「……」
シオンには、もう言葉もなかった。
そして、元パーティメンバー達を翻意させる術もまた、持たなかったのである。




