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休日を振り返って 1

 ――本当、あの日の休日は酷い目に遭った。


 私は学園内の大食堂で溜息を吐く。

 あれから四日が経った今でも、思い出すだけでどっと気疲れしてしまう。


 皆と過ごした休日は、とても楽しい時間であった。


 けれど、最後の最後で台無しになってしまった。


 たとえば、その理由として私たちと真っ向から衝突した謎の集団が挙げられる。


 彼らの正体は、驚くべきことにヘリアン王子を狙った宗教組織の者たちだった。


 ヘリアン王子と私がそれに気付いたのは、大乱闘に発展してしばらくした後である。


 後から続々と現れた人たちが皆騎士団員であったことをヘリアン王子が途中で気付いて声を上げたのだ。


 そして、ドロシアにナイフを突きつけられて依然として身動きが取れない状態のままのケルヴィンが、「おい! こいつら、例の宗教組織じゃねえの!?」と大声を上げて指摘してくれたことにより、ようやく私たちは目の前の謎の集団がヘリアン王子に一目惚れをした者たちではないことに気づいたのだった。


 ちなみに、私たちが最後に接触したのは、騎士団が追っていた宗教組織その1でなく、何一つ尻尾を見せていなかった宗教組織その2の方らしい。


 その1は、ヘリアン王子の似顔絵を描いた絵師がそうだったのだとか。


 そこから追跡して、その1は全員捕まえることが出来たみたいだった。

 ちょうど私たちが昼食を食べている時の出来事である。


 ……しかしそれにしても、後になって思い返せば思い返すほど、何故私は彼らが、ヘリアン王子に一目惚れをした者たちの集まりだと思ったのだろうか強く疑問に思ってしまう。


 我ながら馬鹿すぎて呆れる。

 普通に考えれば、すぐに分かることだろう。恥ずかしい。


 おそらくあの時、私の思考が青春一色に染まっていたからだ。


 それ故に、思い込みが激しくなっていた。


 チンピラたちが恋の告白で現れたのだから、謎の集団たちも恋の告白で現れたのだと普通に思ってしまっていたのだ。……馬鹿すぎる。


 正直言って、凄い恥ずかしい。


 寝る前に思い出したら、ベッドの中で一時間は悶絶するレベルの勘違いである。


 ちなみに、あの場でしばらく勘違いをしていたのは、事情を知らないチンピラたちを除いて私とヘリアン王子の二人だけだ。


 ヘリアン王子は、その事実を知るや否やほっと安堵の表情を浮かべたのだった。


 そして、安堵の表情のまま複数人によいしょと担がれて、どさくさに紛れてそのまま拐われてしまう。


 そう、何故私がこんなにも数日経った今でも精神的に疲弊しているのかというと、あの後ヘリアン王子があっさりと誘拐されてしまったからだ。


 これで二回目である……。


 何故そうなってしまったのか状況を説明すると、宗教組織その1とその2については、騎士団が無事に全員を捕縛したのだが、なんとそこに、まさかの宗教組織その3が現れたのだった。


 何でそんなにいっぱいあるんだ、ヘリアン王子を狙う宗教組織……。


 しかも、それだけでは終わらない。

 その後、その4とその5も追加で出てきたのだった。

 悪夢である。


 そして、そのため、私はまるでたらい回しをされるかのように拐われたヘリアン王子を探して王都を奔走する羽目になったのだった。


 宗教組織その3とその4に関しては、騎士団の手厚いサポートがあったため、共に協力してヘリアン王子を探す形になったのだが、宗教組織その5にヘリアン王子が奪われてしまった際は、運悪く即座に動けるのが私一人しかいない状況に陥ってしまった。


 そのため結局、アジトに私一人で乗り込むことになってしまい、数十人を相手に大立ち回りを演じることになったのだ。


 本当、辛かった……。


 ケルヴィンが持つ知識が役に立って、王都のことを良く知るチンピラたちも協力してくれたおかげで、何とかなったのだが、一時はどうなるかと思った。


 とにかく、もう二度と王都中を駆け回るのはごめん被りたい。

 それに、大勢相手に一人で戦うのも。


 そんなことを考えながら、私はヘリアン王子と昼のランチを食べる。


 現在、私はヘリアン王子にランチを奢ってもらっている状況であった。


 別にいい、と何度も断ったのだが、彼は「君に迷惑をかけてしまった」と頑なな態度を取るため、結果的に私が折れる形となったのだった。


 ランチを食べる私をじっと見つめてくるヘリアン王子。


 た、食べ辛い……。


 どうしてか無性に彼の視線が気になってしまって、スプーンを持つ手が止まる。


「どうした、レイン・メアリクス? まさか先日の時に手でも怪我をしたのか……?」


 いや、違う。

 単に見つめられて食べ難いだけである。


 なので「鬱陶しい、こっちを向くな」とお願いをすると、彼は「……分かった」と渋々頷いてくれた。


「もしも手を怪我していてスプーンが握れないというのなら言ってくれ」


 そう言ってくるが、もしかしてそれってヘリアン王子が食べさせてくれるってことなのだろうか。


 え、いや、それはちょっと……。


 たとえ手を怪我していても、伝えるのに躊躇するやつだ、それ。


 というか、何だかヘリアン王子が私に対して前より幾分か優しくなったような気がする。


 おそらく、二度ヘリアン王子を助けたからだと思うけれど、次にまたヘリアン王子を助けたら今よりもっと優しくなるのだろうか。


 別にもう十分、良い人なのでこれ以上良い人にならなくてもいいのに……。


 というか、誘拐されるのは今回で最後にして欲しい……。お願いである。


 そう心の中で強く思いながら、私はスプーンを口に運んだのだった。

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