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激突 3

 突然、戦い始めた男たち。


 それを見て、サフィーアが声を上げる。


「み、皆さん、危ないことは止めてくださいっ!」


 けれど、彼らが止まることはない。


 サフィーアは、何故彼らが戦い始めたのかその理由は分かっていない状況であったため、どうしようと混乱するのだった。


 一方、カティアと言うと、彼らにただ呆れた表情を向けていた。


「放っておきなさい。すぐに収まるわよ」

「で、ですが……」

「心配する必要はないわ。どうせ少し経てば、疲れて動けなくなるだろうから。馬鹿なのよ、男子って」


 そして、「そう、馬鹿なのよね……」と溜息を付いた後、遠い目をするのだった。




 ♢♢♢



 四人の戦いは、熾烈を極めた。


 だが、しばらくの間続くだろうと思われたその戦いに、終止符を打とうと刺客が放たれる。


「――やあ、少年諸君。面白そうなことをやっているね。良ければ、おじさんたちも混ぜてくれないかな?」

「――ええ、なかなか面白そうだ。是非、君たちと手合わせがしてみたい」


 現れたのは、二人の男。


 一人は、三十代半ばくらいの男であり、もう一人は二十代前半くらいの若者だ。


 突然現れて、明るい表情で、四人に声をかけてきたのだった。


 両者どちらもその立ち振る舞いに隙は無く、無駄なく鍛えられた身体を有していた。


 年上の男が、周囲に聞こえないよう、呟くようにして若者に指示を出す。


「……お前は殿下の方を相手しろ。メアリクスの相手は、お前には些か荷が重い」

「……分かりました。任せます。あと先輩、負けないでくださいよ?」

「……誰に物を言っている。相手はあのアーロン殿の息子さんだ。手加減は出来そうに無いが、負けるつもりは毛頭ない」


 他ならぬ第一騎士団であった。


 二人の騎士団員を差し向けたのは、何を隠そうキースの仕業である。


 唐突に始まった四人の戦いを見て「この忙しい時に何をやってるんだ、この人たち!?」と慌てて人員を投入したのだった。


 問題は早期に解消するに限る。

 どちらか一方を無力化すれば、ことは収まるだろう。


 そう考えた彼らだったが、対する四人は本気だった。


 邪魔者は引っ込んでいろとばかりに、騎士団員二人に鋭い視線を向ける。


 そして皆、どうすれば相手に勝てるのかを真剣に考えて行動している状態であり、誰一人として冷静さを失ってはいなかった。


 それを見て、騎士団員二人は、「……これは泥沼になるな」と覚悟を決める。


「……行くぞ。絶対勝て」

「……了解です。御武運を」


 騎士団二人は、四人の中に飛び込んでいく。


 これにより、三つ巴の戦いに発展し、さらに混迷を極めることになるのだった。




 ♢♢♢



「……どうしますか、教祖様」


 六人となった戦いを、『天使』教の面々が気配を隠して遠巻きから様子を窺っていた。


 自分たちの天使を手に入れようと来てみれば、何故か天使を含めて複数人で戦っている状況だった。


 ――えっ、何これ、どういうこと?


 現在の状況が全く読めず、そう困惑するしかない。


 教祖である禿頭の男は、組織のメンバーにどう命令を下そうか判断に迷う。


 時間が経てば、彼らは自ずと疲弊する。動きが鈍くなったそこを狙えば、簡単に天使を入手することが出来るだろう。


 しかし、時間が経てば経つほどこの場に騎士団が駆けつけてくる可能性が高まってしまう。


 何しろ、現在六人は激しく拳を交わしているのだ。


 喧嘩が起きていると通報されれば、騎士団がすぐにでもやって来るだろう。


 そして、そのまま天使が連行されてしまえば、今回の絶好の機会を逃してしまうことになる。


 出来るなら、それだけは避けたかった。


「……やむを得ない、か」


 教祖の男は、腹を括る。


「今この場で仕掛けるぞ。――『狂信者』を放て。邪魔なあの者共に奴を嗾けて、天使以外を排除させるのだ」


 そう、部下に命令するのだった。

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