激突 2
四人は、一斉に駆け出した。
相手目掛けて、一目散に地を駆け、飛びかかる。
「うおらっ!」
まずは先制攻撃とばかりに、チンピラのリーダーの男が、レインに手を伸ばして掴み掛かる。
その丸太のような腕を見るに、かなりの膂力と握力があるだろうということは明白だ。
まともに捕らえられてしまえば、ろくな抵抗も出来ずに敗北を喫することになるだろう。
しかしレインは、余裕な表情のまま笑みを浮かべた。
「――甘い」
レインはそれを姿勢を低くすることで避け、そのまま相手の懐に入り込む。
そして、流れるような動作で拳を相手の腹部に叩き込んだ。
直撃。
威力は申し分なく、一般的な成人男性相手であれば即座に戦闘不能にさせることが出来るほどの一撃だ。
だが、
「――甘ぇのは、そっちだぜ!」
驚くべきことに、レインの一撃を物ともせず、チンピラのリーダーの男は、再度掴みかかるのだった。
それに対してレインは、舌打ちをしながら再度身を屈めて回避し、一度距離を取るため後退する。
そして、二人はお互いに少し離れた状態で睨み合った。
「なかなかやるな。だが、てめえの攻撃は俺には効かねえぞ?」
平均的な成人男性の身長と比べて頭一つ抜けた背丈と、頑丈な巨体。
――生半可な攻撃ではびくともしない恵まれた肉体。
それが彼の武器だった。
「たとえあの人の弟さんだとしても、躊躇はしねえ。悪く思うなよ」
それに対して、レインは鼻を鳴らすようにして小さく笑う。
「なるほど、いいだろう。――悪くない」
余裕の態度を一切崩さず、相手に告げる。
「かかってこい。少しばかり遊んでやる」
「はっ、それはこっちの台詞だぜ!」
そして、二人は再び駆け出したのだった。
♢♢♢
一方、ヘリアンと眼鏡の優男は、一進一退の攻防を見せていた。
「なかなかやりますね! リアヘンさんっ!」
「君もな! なかなか侮れないっ!」
激しく拳や蹴りを交わす。
ヘリアンが操るのは、騎士団仕込みの格闘術である。
相手を素早く倒すことに長けた実戦的な戦闘方法であるため、喧嘩に慣れている程度の相手であれば、問題なく早期に決着が付いていたはずだった。
だが、予想外なことに、彼は目の前の相手に一撃も入れることが出来ないでいた。
ヘリアンの攻撃を眼鏡の優男が、全ていなしていたからだ。
近距離での攻防を行いながら、二人は言葉を交わす。
「君のその戦い方は何なんだっ。かなり独特だな、この国では見たことがないっ」
「去年くらいにさすらいの旅人に教えてもらいましてねっ。健康にも良いらしいので、続けていますっ」
ヘリアンが鋭く拳を叩き込めば、眼鏡の優男はそれを自分の腕で絡めとるようにして防ぎ、流れるようにカウンターを放ってくる。しかも、その一撃は変幻自在で予備動作を観察しても、軌道を読むのが困難だった。
その戦い方は、まるで蛇のようなイメージだ。迂闊に攻撃すれば、全てカウンターとして返されてしまう。
ヘリアンは、それを持ち前の対応力で全て受け止め、あるいは回避してみせる。
相手の攻撃は、変幻自在ではあるが速さはそれほどではない。
それにレインとの決闘で、何度も足払いをされていたため死角からの攻撃は幾分か慣れていた。
レインほど自然に攻撃を繰り出さないのであれば、対処は難しくても不可能ではない。
勝機は十分にある、ヘリアンはそう考えた。
「良ければ、後でその動きを教えてくれないかっ。健康に良いのなら、少し興味があるっ」
「構いませんよ、コツを掴めば誰でも出来ますからっ。一緒に健康になりましょうっ」
二人は約束を交わしながら、戦い続けるのだった。




