第6話:交錯する思惑
第6話:交錯する思惑
冷徹な青白い光を放つ端末の画面が、静まり返った暗室の中で脈打つように明滅していた。カレイドスコープのように組み合わされたデータストリームが、幾重にも重なる幾何学模様を描き出しながら、目の前の空間に立体映像として投影されている。
「……やはり、構造の崩壊速度が予測値を超えているな」
アレックスは低く呟き、手元の操作端末に素早くコマンドを入力した。彼が身に纏う戦闘服のインターフェースが、かすかな電子音を伴って青から淡い橙色へと切り替わる。それは、システムにかかる負荷が限界領域に近づいていることを示す警告色の光だった。
周囲を取り囲むのは、荒涼としたコンクリートの残骸と、かつて高度な文明が存在していたことを微かに偲ばせる巨大なアーキテクチャの骨組みだ。空を見上げても、そこにあるのは星々ではなく、世界の境界を縫い合わせる巨大なコードの壁だけだった。
「――そこまでだ、異物」
不意に、冷ややかな声音が静寂を切り裂いた。
暗がりの向こう側から、足音さえ立てずに滑り込むようにして現れた人影がある。研ぎ澄まれた金属の輝きを放つ装甲、そしてその手元に構えられた長大な銃器――この世界の管理機構が差し向けた特異個体、その先兵だった。
「お前たちがどれほど過去の残骸を掘り起こそうとも、この『記録』の軌道を変えることはできない。それは無駄なあがきだ」
「無駄かどうかは、実際にやってみなければ分からないさ」
アレックスは冷笑を浮かべ、腰のホルダーから抽出した共鳴球を強く握り締めた。球体が彼の生体エネルギーに反応し、微高周波の振動音を空間全体に響かせ始める。
空気が歪み、重力が一瞬だけ逆転したかのような錯覚が走る。
「行くぞ……!」
一触即発の緊張感の中、二つの影が黒煙と閃光の交錯する荒野へと踏み出した。




