第38話 クラス分け『試験』・2
「2チーム目、試験はじめっ!」
女性教師の元気な号令とともに、
2チーム目の試験がスタートした。
「よし、まずは機動力を底上げしないとね!
雷騰金兎!」
——バリバリバリッ!
黄金井乃愛の小さな体に、
バチバチと電気がまとわりつく。
(おっ、僕も使える術式だ!
電気で筋肉を強制的に動かして、
スピードを飛躍的にアップさせる技だね)
目にも止まらぬ速さで駆け出した彼女は、
さっそく黒い犬の式神『疾狗』を発見した。
「まずはキミ!
祓火!」
彼女の指先から、勢いよく炎が放たれる。
和風版の火球。
下級の術式だけど、練度が高い。
速度も威力も文句なしだ。
放たれた火球は、すばやく逃げ回る疾狗に命中。
見事に一撃で撃破した。
休む間もなく、
彼女は次の標的『大甲童子』を見つける。
『敵ヲ発見。防御術式ヲ展開シマス。
布陣結界・護将帷幕』
からくり人形の周囲に、
分厚い白い壁が出現した。
大甲童子は歴史ある式神である。
最初に生み出されたのは、武士の時代。
合戦で本陣を守るために使われていた。
防御術式を自動で張ってくれる有用な式神だが、
歴史がある分、弱点も広く知れ渡っている。
「上がガラ空きだよ!
雪渓疾駆!」
——パリパリパリッ!
乃愛ちゃんは足元から斜め上に向かって、
巨大な『氷の滑走路』を作り出した。
スキージャンプのように氷の上を滑り上がり、
防御結界を軽々と飛び越える。
そして、
「辻燕!」
——ヒュンッ!
上空から放たれた小型の『かまいたち』が、
大甲童子の首をスパッと綺麗に切り落とした。
「オッケー!
さくさく次いこー!」
乃愛ちゃんはウインクを決めて、
次の獲物へと走っていく。
(あの子、かなり戦闘慣れしてるな)
僕は感心しながら、
彼女の無双ぶりを見つめていた。
一撃必殺の高火力技こそないが、さまざまな下級術式を状況に合わせて上手く使いこなしている。
白玖ちゃんの話によると、彼女は6属性すべての術式を扱えるとのことだった。
たしかに、今の短い戦闘だけでも、すでに『雷・火・氷・風』の4つの属性を見事に使いこなしている。
ほかの生徒たちが1つの属性、しかも下級術式を放つだけで手一杯になっているのとは大違いだ。
(1つの属性を極める『天才』というよりは、
幅広く何でもこなす『秀才』って感じだな)
そんな感じで、僕がのんきにオタク特有の戦闘分析を行なっていると、
「邪魔だ、どけ!」
「お前がどけよ!」
不意に、怒鳴り声が聞こえた。
見ると、乃愛ちゃんが式神をどんどん狩っていくため、残った少ない獲物をめぐって、ほかの生徒たちが奪い合いのケンカを始めていた。
(小学生のケンカはあるあるだけど——)
いくら子供とはいえ、彼らはすでに人を殺めるだけの『力』を持った術士なのだ。
「やんのか!」
「あぁ、やってやるよ!」
2人の生徒の手元に、
危険な術式が練り上がり始める。
(やばい、止めないと——!)
僕が慌てて飛び出そうとした、
その瞬間だった。
「はしゃぐな、バカども」
——バチィィィンッ!!
凄まじい轟音とともに、2対の強烈な電撃がケンカしていた生徒たちを直撃した。
「「あぐっ……!」」
かなりの高電圧。
ケンカしていた生徒たちは一瞬にして気絶し、
白目を剥いて力なくグラリと倒れ込んだ。
電撃を放ったのは——、
「お前ら、真面目にやれ」
あのヤクザ顔負けの強面教師である。
(うわぁ、容赦ないなぁ……。
事前の説明で言っていた『地獄の折檻』って、
比喩じゃなくてマジのやつだったんだ……)
その後、
生徒同士の小競り合いはいっさい起こらなかった。
まるで軍隊だ。
学校生活がちょっと不安になってきたな……。
◆
——ピィィィィィッ!
「はーい、そこまで!
試験終了でーす!」
女性教師がホイッスルを鳴らすと、残っていた式神たちがフッと煙のように消え去った。
「あーくやしぃ〜!
あと6体倒せたら1位だったのに!」
乃愛ちゃんが、頭を抱えて地団駄を踏んでいる。
現在の式神討伐数は、以下の通りだ。
1位:98体・雷堂千景
2位:93体・黄金井乃愛
……。
「乃愛ッチ、けっこうやるやん!
もう少しで最強の座を奪われるとこだったわ!」
千景が、ニカッと笑ってサムズアップを送る。
「む〜、次は絶対に負けないからね!」
2人は笑顔で拳を突き合わせる。
(千景の術式の方が派手でインパクトがあったけど、
乃愛ちゃんはいろんな術式を見せてくれたからな。
僕的にはとても大満足です!
2人ともグッジョブ!)
入学式からまだ1日しか経っていないが、
すでに友情があちらこちらで芽生えている。
僕も友達100人はやく作らないと!
白玖ちゃんとは友達になったから、
あと99人だね!
◆
「では、次の3チーム目の皆さーん!
準備してくださーい!」
3チーム目の番だ。
僕は最後の4チーム目だから、
まだゆっくり見学できる!
「では、行ってきますね」
隣にいた白玖ちゃんが、上品にお辞儀をする。
彼女は3チーム目らしい。
「頑張ってください!」
僕がグッと拳を握って応援すると、
彼女はひらひらと可憐に手を振り返してくれた。
そのまま彼女の背中を見送りがてら、
3チーム目の集団に目を向ける。
すると、
みんながやる気に満ちている中、集団のいちばん後ろでどんよりとした暗いオーラを放っている人物がいた。
「あぁ、ついに僕の番になっちゃった……。
あ、ダメだ、気持ち悪くなってきた。
もうぜんぶ式神に任せて、僕は隅っこにいよう」
遠い目をしてブツブツとつぶやいているのは、
黒髪で大和撫子な少女、神代悠里。
有名な神社の宮司の家系で、極度の人見知り。
おまけに、
自分のことを僕と呼ぶ『僕っ子』みたいだ。
(あの子も、かなりの実力者らしいよね。
彼女はいったい、どんな術式を見せてくれるのだろうか?)
僕の期待が高まる中。
——ピィィィィィッ!
3チーム目、試験開始のホイッスルが鳴り響いた。




