↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/47

第24話 計画は『超順調』・後編

『プロジェクト・ニルヴァーナ』を始動して1ヶ月。


 正義の呪術教団を立ち上げ、

 この世界に救済をもたらす。


 そのために僕は、『地獄の開発』を進めている。


 そしてその計画は、

 自分で言うのもなんだが、

 びっくりするくらい超順調に進んでいた。


     ◆


 土蜘蛛《つちぐも》を倒した僕は、休憩《きゅうけい》のために拠点へ戻ってきた。


 すると、


 前から小走りで何かがやってくる。


 『16号』と書かれた服を着る1匹の餓鬼だ。


 そう。


 こいつは、僕が調伏した餓鬼である。


「教祖サマ、教団ノ宿舎ガ完成シマシタ。

 作戦本部モ、モウスグ完成シマス」


 16号がペコペコと頭を下げて報告してくる。


 教祖様……僕はそう呼ばれている。

 まぁ、教団を立ち上げたのは僕だから、

 僕が教祖で間違いないのだろう。

 ちょっと小っ恥ずかしい。


 ちなみに信仰している神様は、儺流《なる》ちゃんだ。


「え、マジで?

 もうできたん?」


「ハイ、教祖サマノタメニ、急イデ作リマシタ。

 ナノデ、飯ヲクダサイ」


「それ、僕のためじゃなく飯のために頑張ってるよね?

 まぁ、頑張ってくれたことには変わりないか。

 あとでみんなの分の飯を持ってくね」


「アリガトウゴザイマス!」


 餓鬼は嬉しそうに飛び跳ねると、

 また大急ぎで仕事へと戻っていった。


 妖怪の調伏。


 それはつまり、妖怪と契約をかわして隷属《れいぞく》させることだ。

 

 妖怪によって調伏方法はちがう。


 力でねじふせる場合もあれば、

 特殊な条件がある場合もある。


 餓鬼の調伏方法はわりとシンプルだった。


 もちろん、教えてくれたのは儺流《なる》ちゃんだ。


『餓鬼を調伏したいとな?

 それなら、霊力をこめた食料を与えれば良い』


 聞いたらなんでも教えてくれる儺流《なる》ちゃん。

 いつも本当に助かっている。

 さすがは、僕たちの神様。


 大好きよ、儺流《なる》ちゃん!


 話を戻して。


 なんでも、餓鬼には『触った食料が瞬時に腐る』という特性《のろい》があるらしい。


 だから、餓鬼はいくら食べ物を探しても食べることができず、いつも腹をすかせているのだ。


 しかし、霊力でコーティングした食料なら餓鬼の特性を跳ね返すことができる。


 永遠の飢《う》えに苦しむ彼らにとって、

 それはまさに仏のごとき救い。


 一飯《いっぱん》の施《ほどこ》しを与えてやれば、餓鬼はポロポロと涙を流して、簡単に隷属してくれるのだ。


 幸い、僕には膨大《ぼうだい》な霊力がある。


 これまでに餓鬼をいっぱい倒して、

 その力を吸収してきたからね。


 餓鬼を倒して得た霊力で、

 生き残った餓鬼に飯を食わせ、調伏する。


 なんだか餓鬼が可哀想《かわいそう》になってくる気もするが、向こうから「肉だー!」と襲ってくるのだから仕方がない。


 これも弱肉強食の世界の理なのだ。


 というわけで、


 僕はとりあえず300体ほどの餓鬼を調伏した。


 そしてその結果、


――地獄の開発は一気に進んだ。


 まだ1ヶ月しか経っていないので、

 お城やビルができたわけじゃない。


 でも、丸太を組んで作った立派な宿舎や、

 小石を敷き詰めて歩きやすくした道。


 手掘りの用水路に、

 木枠で囲った修練場まで。


 300体の労働力と、『死門遊観《しもんゆうかん》』による資材の運び込みのおかげで、すごいスピードで拠点ができあがっているのだ。


 あと、情報収集も餓鬼にやってもらっている。


 人里離れた場所で、

 仲間になってくれそうな妖怪を探したり、

 悪い妖怪を見つけたり。


 いまさっき僕が倒した土蜘蛛も、探索に出た餓鬼たちが見つけて報告してくれたものだ。


 マジで、餓鬼、めっちゃ頼りになる。


 とはいえ、

 300体もの餓鬼を使役していると、

 食料の確保が大変だ。


 今は、赤洛《しゃらく》が山の野生動物を狩ってくれているので、なんとかなっている。


 それに現在、地獄に農場を開拓中だ。


 食料問題も近いうちに解決するだろう。


 綺麗に平らにならされた歩道を、

 僕は満足そうに歩く。


 次に向かうのは、『修練場』だ。


 この時間は、おそらく――。


「うむ、よいぞ2人とも。

 闘気のブレがほとんどない。

 しっかりと纏うことができておる」


 修練場から、儺流ちゃんの声が聞こえてきた。


 儺流ちゃんの指導による、

 赤洛と菊千代ちゃんの武術特訓。


 今は、武器に闘気を纏わせる『闘気纏与《とうきてんよ》』の修行中だ。


 菊千代ちゃんは、僕と同じ小太刀を。

 赤洛は大剣を構えている。


 ちなみに、武器は現世で鉄屑《てつくず》を集め、地獄の業火《ごうか》で溶かして、それっぽく形にした手作り品である。


 見た目は不格好。

 だが、闘気を纏わせれば立派な武器だ。


「おつかれさまです。

 修行の方は順調そうですね」


 僕が声をかけると、

 赤洛が大剣を下ろして手を挙げる。


「おぉ、教祖様。

 そっちはどうやった?」


「無事に祓うことができました。

 人が襲われてましたが、間一髪で間に合いました。

 これでもう、あの山は安全です」


「おぉそうか、流石やな」


 赤洛が、口角を上げて笑った。


「菊千代ちゃんも、しっかり闘気を纏えてたね。

 そういえば、この服。

 本当に動きやすくて助かってるよ。

 作ってくれてありがとね」


「うん……ウチも、喜んでもらえて嬉しいわ」


 菊千代ちゃんが、はにかむように微笑んだ。


 僕が今着ている、真っ黒な陰陽師風の衣装。

 それに、翁のお面。

 これらは、菊千代ちゃんに作ってもらったものだ。


 なんでも、梨香さんから裁縫を教わっていたらしい。

 翁のお面も、試行錯誤しながら作ってくれた。


 服やお面を製作する過程で、「この刺繍、最高にイカしてるね!」「翁の髭は、ちょっと長めに!」などと話し合ったおかげで、僕たちはけっこう仲良くなることができた。


 最初の頃の、警戒した目つきはもうない。

 ここの生活にも少しずつ慣れてきている。


 ひとまず、安心だね!


「よし、じゃあ僕も修行に混ざろうかな!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。