第24話 計画は『超順調』・後編
『プロジェクト・ニルヴァーナ』を始動して1ヶ月。
正義の呪術教団を立ち上げ、
この世界に救済をもたらす。
そのために僕は、『地獄の開発』を進めている。
そしてその計画は、
自分で言うのもなんだが、
びっくりするくらい超順調に進んでいた。
◆
土蜘蛛を倒した僕は、休憩のために拠点へ戻ってきた。
すると、
前から小走りで何かがやってくる。
『16号』と書かれた服を着る1匹の餓鬼だ。
そう。
こいつは、僕が調伏した餓鬼である。
「教祖サマ、教団ノ宿舎ガ完成シマシタ。
作戦本部モ、モウスグ完成シマス」
16号がペコペコと頭を下げて報告してくる。
教祖様……僕はそう呼ばれている。
まぁ、教団を立ち上げたのは僕だから、
僕が教祖で間違いないのだろう。
ちょっと小っ恥ずかしい。
ちなみに信仰している神様は、儺流ちゃんだ。
「え、マジで?
もうできたん?」
「ハイ、教祖サマノタメニ、急イデ作リマシタ。
ナノデ、飯ヲクダサイ」
「それ、僕のためじゃなく飯のために頑張ってるよね?
まぁ、頑張ってくれたことには変わりないか。
あとでみんなの分の飯を持ってくね」
「アリガトウゴザイマス!」
餓鬼は嬉しそうに飛び跳ねると、
また大急ぎで仕事へと戻っていった。
妖怪の調伏。
それはつまり、妖怪と契約をかわして隷属させることだ。
妖怪によって調伏方法はちがう。
力でねじふせる場合もあれば、
特殊な条件がある場合もある。
餓鬼の調伏方法はわりとシンプルだった。
もちろん、教えてくれたのは儺流ちゃんだ。
『餓鬼を調伏したいとな?
それなら、霊力をこめた食料を与えれば良い』
聞いたらなんでも教えてくれる儺流ちゃん。
いつも本当に助かっている。
さすがは、僕たちの神様。
大好きよ、儺流ちゃん!
話を戻して。
なんでも、餓鬼には『触った食料が瞬時に腐る』という特性があるらしい。
だから、餓鬼はいくら食べ物を探しても食べることができず、いつも腹をすかせているのだ。
しかし、霊力でコーティングした食料なら餓鬼の特性を跳ね返すことができる。
永遠の飢えに苦しむ彼らにとって、
それはまさに仏のごとき救い。
一飯の施しを与えてやれば、餓鬼はポロポロと涙を流して、簡単に隷属してくれるのだ。
幸い、僕には膨大な霊力がある。
これまでに餓鬼をいっぱい倒して、
その力を吸収してきたからね。
餓鬼を倒して得た霊力で、
生き残った餓鬼に飯を食わせ、調伏する。
なんだか餓鬼が可哀想になってくる気もするが、向こうから「肉だー!」と襲ってくるのだから仕方がない。
これも弱肉強食の世界の理なのだ。
というわけで、
僕はとりあえず300体ほどの餓鬼を調伏した。
そしてその結果、
――地獄の開発は一気に進んだ。
まだ1ヶ月しか経っていないので、
お城やビルができたわけじゃない。
でも、丸太を組んで作った立派な宿舎や、
小石を敷き詰めて歩きやすくした道。
手掘りの用水路に、
木枠で囲った修練場まで。
300体の労働力と、『死門遊観』による資材の運び込みのおかげで、すごいスピードで拠点ができあがっているのだ。
あと、情報収集も餓鬼にやってもらっている。
人里離れた場所で、
仲間になってくれそうな妖怪を探したり、
悪い妖怪を見つけたり。
いまさっき僕が倒した土蜘蛛も、探索に出た餓鬼たちが見つけて報告してくれたものだ。
マジで、餓鬼、めっちゃ頼りになる。
とはいえ、
300体もの餓鬼を使役していると、
食料の確保が大変だ。
今は、赤洛が山の野生動物を狩ってくれているので、なんとかなっている。
それに現在、地獄に農場を開拓中だ。
食料問題も近いうちに解決するだろう。
綺麗に平らにならされた歩道を、
僕は満足そうに歩く。
次に向かうのは、『修練場』だ。
この時間は、おそらく――。
「うむ、よいぞ2人とも。
闘気のブレがほとんどない。
しっかりと纏うことができておる」
修練場から、儺流ちゃんの声が聞こえてきた。
儺流ちゃんの指導による、
赤洛と菊千代ちゃんの武術特訓。
今は、武器に闘気を纏わせる『闘気纏与』の修行中だ。
菊千代ちゃんは、僕と同じ小太刀を。
赤洛は大剣を構えている。
ちなみに、武器は現世で鉄屑を集め、地獄の業火で溶かして、それっぽく形にした手作り品である。
見た目は不格好。
だが、闘気を纏わせれば立派な武器だ。
「おつかれさまです。
修行の方は順調そうですね」
僕が声をかけると、
赤洛が大剣を下ろして手を挙げる。
「おぉ、教祖様。
そっちはどうやった?」
「無事に祓うことができました。
人が襲われてましたが、間一髪で間に合いました。
これでもう、あの山は安全です」
「おぉそうか、流石やな」
赤洛が、口角を上げて笑った。
「菊千代ちゃんも、しっかり闘気を纏えてたね。
そういえば、この服。
本当に動きやすくて助かってるよ。
作ってくれてありがとね」
「うん……ウチも、喜んでもらえて嬉しいわ」
菊千代ちゃんが、はにかむように微笑んだ。
僕が今着ている、真っ黒な陰陽師風の衣装。
それに、翁のお面。
これらは、菊千代ちゃんに作ってもらったものだ。
なんでも、梨香さんから裁縫を教わっていたらしい。
翁のお面も、試行錯誤しながら作ってくれた。
服やお面を製作する過程で、「この刺繍、最高にイカしてるね!」「翁の髭は、ちょっと長めに!」などと話し合ったおかげで、僕たちはけっこう仲良くなることができた。
最初の頃の、警戒した目つきはもうない。
ここの生活にも少しずつ慣れてきている。
ひとまず、安心だね!
「よし、じゃあ僕も修行に混ざろうかな!」




