アリス、成し遂げる。
跳んで、伏せて、跳んで、跳んで、回って、走って、また跳んで、止まって、後ろへ跳ぶ、と見せかけて倒れる。仰向けの状態からごろごろと身体を1回転半転がし、腕の力で飛び起きる。
あいつの攻撃を避けれているわけではない。だが、回復に時間がかかるほどの大怪我でなければ問題ない。具体的には、肘から先、膝から先がなくなる程度の怪我は割り切っている。当然だが、近づけば近づくほど攻撃が自分に届くまでの時間が短い。なので、自分が対応できる限界の間合いで耐えながら隙をうかがう。
大立ち回りの裏で超繊細な間合い管理をしている俺とは対照的に、アリスはゆっくりと歩きながらあいつの元へ歩いていく。肩越しに右手の指先を向けられ、その直後“爪”が弾け飛ぶ。さながら散弾銃のように放たれた爪を、しかし一切の防御回避なしで正面から受け止めたアリスは歩みを一旦止める。背中の真ん中から伸びた2本の針がアリスへと伸びてゆき、しかしその針はアリスを貫くことはなく、アリスの脇の下を抜ける。
その未来予知じみた回避が、どのような方法でなされているのかはわからない。というか避けれてる方が珍しく、ほとんどは正面から攻撃をくらっている。一種の“死に覚え”なのか、あるいはそういう能力なのかはわからないが、アリスはよく見る相手の攻撃のうちのいくつかに対して最小限の回答を用意できている。
最初に動いたのはアリスだった。
十分近づいた、と言わんばかりに突然走り出した。既に2本の針を引っ込めているあいつは、身体ごと振り返りアリスを見ると、素早く変形し伸ばした腕で2メートルほど離れた位置にいるアリスの腹あたりにアッパーパンチを振るう。その拳は本来ならアリスの腹を吹き飛ばすものだったが、アリスはなんとそれを読んだ。
拳を振るうより先に身体を前へ傾けながらジャンプしたアリスは、その脚を腹の前で折りたたむ。そこにアッパーが振るわれ両脚が粉砕され、衝撃で内臓もダメージを負った。
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これは計画だ。反撃が難しいゴムゴムのアッパー以外の攻撃の可能性を割り切って、一点読みした。アッパーを腹に受け腹が吹き飛ぶと一時的に戦闘不能になる。それを防ぐために脚でガードする必要があった。脚でガードすると脚を失い、あいつに近づくことができなくなる。だから助走による慣性が必要だった。立った姿勢でアッパーを食らうと、上に打ち上げられてしまう。身体を前に傾けることで、アッパーの力を前方向の回転に変え、高度を抑えることができると思った。
そして、ここまでの奇策をもってしてなお、あいつは反撃してくるだろう。だからわたしは、獲得したそれを、今この瞬間まで隠していたそれを使うと決めていた。
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空中で回転しているアリスに、少し恐怖を感じる。脚を吹き飛ばされ、身体も回転しながら飛んでるこの状況で、アリスあいつを殺すと言わんばかりに腕を伸ばしている。アリスは母を侮辱されたという理由だけでこうなっているのだろうか?これからは何があっても有砂母に不敬な真似をしないと誓いながら、俺も駆ける。
一瞬、あいつの白い髪の毛のうちの一本が銀色に光った気がした。視認性の極めて悪い、鋭く硬く変質した髪の毛を2本操り、高速でムチのように振るって肉を切るし骨も断つ、発生の早く回避の難しい攻撃がある。おそらく、アリスを迎撃するためだろう。
びゅん、と音がしたと思ったが軌道は見えなかった。アリスを見ると特にダメージを受けた様子はなく、そのまま一回転したアリスの顔が、あいつの顔の斜め上方に来たとき、伸ばした腕が首を掴み、絞める。
何が起きてるか分からない。それに、そんなことでは死なないだろうとか、お前の方が先に出血で倒れるだろうとか、いろいろ思うところはある。あるが。
俺は心の中で、されど心の底から、アリスに拍手をおくった。
【宙避】
一瞬だけ、自分の存在する座標を4次元方向へずらすことができる
使用者のDEXが高いほど、効果時間が伸びる
使用し、この3次元空間から一時的に存在を消滅させることで、
一時的に魔物などからのあらゆる影響を無効化することができる
ただし、毒など体に既に取り込まれたものはその限りではない
(消費MP:1800 所要時間:0s)
(即時発動:可)




