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廃ゲーマー、鍛治師になる。  作者: タコマル水産
【第一章】積み上げた石の数を数えて
15/16

記念すべき1つ目の称号

一昨日更新できなかった件ですが

VCC INK FES見てましたすいません

Eチーム惜しかった〜、ナイスファイト!

 翌日。パーティーを組んだとはいえ、特に変わった様子もなくいつも通り王都を出発したクラスメイトたちを見送って、俺と白南風は適当に街を散策する。


 アリスと陽昇は別行動だ。これから必要となるアイテムや武器の買い出しに行っている。どうやってお金なんか入手したのかと尋ねたら、コウシー、この世界に転移して最初に会った神父に「必要だからちょうだい」と言って貰ったらしい。


 この世界の相場を知っているアリスは俺たちのパーティーの買い物担当ではあるのだが、ゲーマーではないのでアイテムの強い弱いを判断できるわけではない。それでゲーマーを1人つけようという話になり、陽昇がアリスとペアで行動しているというわけである。


「ねえ、あれ、何?」


 しばらく歩いていると白南風が河原の方を指差しながらそう言った。見ると河原に人だかりができている。子供でも溺れたのかと思ったが、どうやらそんな様子でもない。


 鎧を着た、重戦士のような筋肉ダルマがいた。タキシードを着た、怪盗のような美少年がいた。ベレー帽をかぶり、絵の具のついたオーバーオールという、100人見たら100人が画家だと答える格好をした少女もいれば、白い髭を生やした仙人みたいにおじいちゃんもいた。


 老若男女問わないその集団は、遠くからでは何をしているのかはっきりとわからないが、何かを川へ投げているように見える。……水切り?


 とりあえずその辺にいた人に適当に声をかける。顔立ちのそこそこ整ってる好青年だが、それ以上の特徴は外見からは感じられない。


「すみません、これって水切り、ですよね?なんでこんなにたくさんの人たちが集まってるんですか?」

「えーっとね、…あ、君たちもしかして転移者じゃない?」

「まあ、そうですけど。」

「やっぱり!見かけない人たちだなー、って思ったもん。水切りが何かはその様子だと知ってるよね?ここに集まってる理由よりも先に、なんで水切りしてるかの説明をしたほうが良かったりする?それともそれは分かる?」


 この人親切だな。それでいてめっちゃ喋る。別に、なんで水切りしてるかだけ知れればそれで良かったんだけど、まあついでだし全部教えてもらうことにした。


「まず、ステータスについては分かる?」

「いや、なんとなくしか知らないです。数値の見方はわかるけどどういう基準で上がるのかは探り探り、って感じです」

「見方?まあいいや。じゃあステータスの仕組みについて説明するね。まずステータスは厳密にはさらに「基礎値」と「努力値」の2つに分けられる。」


 なんか、すごく聞いたことがある単語が聞こえてきた。いや、そのゲームでは基礎ポイントと努力値は同じ意味だが。


「基礎値は名前の通り基礎的なステータス。基本は増えたり減ったりしないけど、戦闘や探索の経験を積むと突然飛躍的に伸びることがある。これは確か、減ることはないんじゃなかったかな?ごめん、僕も正確に把握しているわけではないんだけど。」


 つまり、レベルアップによって伸びる普通のステータス、ってことか。なんとなく予想はつくけど、俺たちが言っていた、行動がステータスに影響するのとはまた別のカテゴリーの数値もちゃんとあるんだな。

 トレーニングをサボりまくっても最低限のステータスは保証されてるのはいいね。


「努力値はこれも名前の通りで努力分のステータス。伸びやすい行動をすればそのステータスが伸びる。ただ、習慣づけてないとそのうちまた元の数字に戻ってしまう。人によっては習慣ステータス、って呼ぶ人もいる。」


 これは、ほぼ事前予想通りだったな。あのクソウサギとの戦闘でいくらなんでも伸びすぎだったので、どうせ一時的なバフみたいなもんだとは思っていたが、このステータスがずっと続けばいいのにと期待してもいたのでちょっとショックだ。

 ちらりと白南風を見る。話に置いていかれてる様子はない。白南風はゲームをやったことがないはずだが、さすがにこのレベルの話にはついてこれるか。流石である。


「じゃあ、これはステータスを伸ばすためにやってるんですね。ちなみになんのステータスが伸びるんですか?」

「水切りで上がるのは技量と感覚だね。2個上がるのはなかなか珍しい、しかも需要の高い2つだからね。」

「…なるほど。それでいろいろな職業の人が集まりすぎてこんな百鬼夜行みたいなことになってるのか。」

「百鬼夜行……まあ、たしかに百鬼夜行か。何をするにも技量と感覚はあった方がいいからね。」

「感覚って、冒険でどう役に立つんだ?」

「うーん、まず、敵の気配に気づきやすくなるでしょ。あとは、戦闘中に敵の殺気?みたいなのを感じて次敵がどんな攻撃を仕掛けてくるか勘で分かるとか分からないとか。1つ目のはともかく2つ目のはあんまり恩恵感じた話聞かないけど。」

「最後にもう一つ聞かせてくれ。体力が戦闘も何もしてないのに減ってることがあるのはなんでだ?」

「なんで、って言われても…。君たちの元いた世界だと体力って戦闘しなきゃ減らなかったの?」

「いや、ごめん。今の反応で解決した。」


 これ体力じゃなくてスタミナだな。あの神ほんとややこしいことしやがって。


「ありがとう、助かった。ここで会ったのも何かの縁だ。名前だけ聞いてもいいか?」

「僕の名前はダックだよ。」

「俺は鳥塚綾人だ。」 

「私は、白南風京子です。」

「せっかくだし、君たちも水切りやっていきなよ。」


 俺と白南風は顔を見合わせる、がお互い結論は同じなようだ。

 俺は鍛冶や錬金術関係でDEXを上げたい。白南風はアビリティ《二刀流使い》を持っているため、やっぱりDEXを上げたい。というわけで俺たちも水切りをやっていくことにした。

 まずは白南風から。


 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、


「11回か、なかなかすごいんじゃないか?」

「いや、十分すごいよ!君もしかして錬金術師だったりする?」

「いや、白南風は違う。ただ俺は錬金術師だ。」

「ほんとに!?実は僕も錬金術師なんだよ。いやー、錬金術師ってなんだかんだ珍しいからね。仲間を見つけたみたいでなんか嬉しいね。」


 その気持ちはめっちゃ分かる。俺も野良パで自分しか使ってないと思ってたビルドを組んだプレイヤーとマッチングしたらなんか嬉しくなるもん。


「それで、なんで白南風が錬金術師だと思ったんだ?錬金術師だと水切りが上手になるのか?」

 いやそんな馬鹿な、と思って聞いたのだが、

「錬金術師には素材や自然環境に対する理解が深い、っていう特徴があってね、例えばこういう石なんかは、どんな素材でできてて、どのくらいの重さがあって、重心がどこ、っていうのが持っただけでなんとなく分かるんだよ。もちろん本人の感覚次第ではあるけど。それで錬金術師は水切りが上手な人が多いんだよね。」

 そんな馬鹿な話が本当にあった。果たして俺はこの世界(ゲーム)を攻略(クリア)できるのだろうか。まじでこの世界に来てから、洗礼という洗礼を受けすぎている。


「錬金術師じゃないのに2桁って、君技量いくつ?」

「えーっと、確か1200くらい?だったと思う。」


 化け物すぎる。え、レベル1だよね?努力値も0だよね?いや、日本にいた頃の剣道部の分が数えられてたら0じゃないだろうけど、そうじゃない可能性のほうが高いわけで。それでクソウサギボーナスのある俺にダブルスコアって。意味が分からん。ステータスお化け。


 ダックさんが白南風に夢中になってる間に、俺も投げることにした。白南風ほどではないが俺もなんだかんだでDEXは580、SNSは420。錬金術師の素材に対する理解度はSNS依存らしいし、今の自分はステータスは300超えたらとんでもなく高いもんだと思ってるので、とんでもない回数を記録してしまう可能性が十分ある。

 水切りで目立つのは悪目立ち感強くてなんか恥ずかしい。周りに騒がれる前にサクッとやってしまおう。お、この石良さそう。…いや、良さそうな石を選ぶ必要なんてないんだけど。なんなら適当な石で記録を抑えたほうがいいんだけど。なんとなくより記録を伸ばそうとしてしまう。これもまたゲーマーの性か。


 1、2、3、…………


「………、29、30、31、31回か。」


 ぼそっと呟いて2人の方を見る。別に見られていたりはしないようだ。周りを見ても、自分のことに集中していたのか、特に騒ぎ立てるような様子もない。


 ほっとしていると、突然【才能の名刺(ステシ)】が飛び出た。びっくりし、慌てて周りの人から離れて画面を確認すると、画面には


『称号を獲得しました。』


 と表示されている。やっぱりこの世界ゲームだろ。ちょっとくらい隠そうとしろよ。


 どうやらこの世界(ゲーム)には称号というものがあるらしい。おそらくなんらかの条件を達成すると順次獲得できるのだろう。……おや?この『セット』って表記は一体なんだ?


「うわっ!」

 押すと突然左手が青い光、魔法陣のような、光の帯のようなものに左手を囲まれた。しばらくすると左手の甲に、今度は正真正銘の魔法陣が左手に刻まれる。

 錬金術でも使えるようになんのか、とのんきなことを考えていると、


「なあ、あれ。あいつの左手の甲のあれって」

「待って、あれ《水切り名人》の称号じゃない!?」


 やっべ。


「水切り名人って、誰も取れてなくて都市伝説だと言われていたあの!?」

「ねぇ鳥塚くん!?なんでもうやってるの!?やるとき言ってよ!私も見たかったよ。」

「本当に君たちはすごいね。もう僕驚き通り越しちゃったよ。転移者ってみんなそうなのかい?」


 たかだか水切りごときの話なのに、まるで王族でも暗殺されたのかと疑うほどのスピードで街中に情報が広まり、もうあっという間に手に負えなくなってしまった。たかだか水切りごときの話なのに……

 なんとか住民の包囲を振り切り城へ戻ると、そこで待っていたのは笑い転げている子供組2人(アリスと陽昇)だった。

一応補足というか、設定付け加えておくと、

この世界(ゲーム)において称号には本当になんの意味もありません。

この世界の神様がチョけた結果できたものだとでも思ってください。

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