《ラビット・アサルト》
「この惨状は、《変質者》にやられたな。」
駆けつけた王国騎士は端的にそう言い放つ。
「君たち、落ち着いて。あの2人は死んでない。《変質者》が闘いの最後に放つ煙によって気絶させられているだけだ。」
「でも、じゃあこの血と、あの、あそこに積んである、あれは」
「《変質者》は闘いのなかで相手の傷を治すんだよ。なんのためかは分かってない。ただの暇つぶしという説すらある。」
「えぇ…」
「《変質者》は《伝説の七》の一体だ。しかも七体のなかでもかなり強い方。雑に強さを表現するなら魔王3体分くらいか?」
彼曰く、かつて魔王討伐を成し遂げた勇者一行をもってしても、挫折し撤退を選ばざるをえなかった、そんな魔物が7体いると記録されており、それらを総称して《伝説の七》と呼んでいるという。長い歴史の中で数多の勇者がそれらに挑戦しては散ってゆき、今に至るまでにたった1体しか討伐がなされていないのだとか。
それからクラスのみんなに状況を共有し、今日の探索について話し合う。この世界に来て2日目ではあるが、魔物との戦闘に慣れるという意味も込めて騎士付き添いのもと森へ探索にいく予定だったのだ。
ただ、鳥塚とアリスがこの状態だ。いくら王国の治癒術師が診てくれるからといっても、クラスの誰も付き添わないのはどうなのか、という理由で、未だに寝こけている陽昇のこともあって白南風が城に残ることとなった。
それから少しだけ時間が経過して、医務室で目覚めた3人に事情を話す。
陽昇は驚き目を見開いていた。
アリスは何かじっくり考えたあと、覚悟を決めたような顔をした。
鳥塚くんはまた面倒ごとが増えた、と言わんばかりに眉をしかめた。
三者三様の反応を見せるなか、ところで、と今の話を水に流すかのようにアリスが話題を変え尋ねる。
「今はクラスで足並みを揃えて動いているけど、近いうちに少人数グループに分けたほうがいいと思うの。」
アリスの主張はもっともだ、と思った。クラスメイトたちは皆できることが違う。全員で歩幅を合わせようとすればどこかで必ず不和が生まれる。それに《伝説の七》とかいう、30人がかりで倒せない可能性のある強力な魔物の存在も確認できた今、全員で一緒に動くのはリスクの方が高い。
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だが、それだけじゃないんだろう?
俺はブチギレ状態のアリスを見ている。きっとアリスは、魔王を倒して日本に帰るというクラスの目標を無視してでも、《変質者》とかいう魔物を討伐しようとしているのだろう。そのためにクラスを細かく分け、個人的な要求であるそれを実行しやすくしようとしている、と思う。だから、続く言葉も分かる。
「それでさ、私たち4人でグループを組まない?」
「俺はいいぞ。っていうか、拒否権なんてないんだけどな。」
「?…ああ、そっか。鳥塚くんは鍛治師だからみんなと一緒に行動、ができないのか。」
そうなんだよ。正直、この提案はクラスにとっては相当悪手なのだが、俺自身にとってはこの提案は渡りに船なのである。
「うーん?よくわかんないけど、私はいいよ。京ちゃんと師匠とアリスちゃんの4人パーティなら相当心強いし。」
「まあ、私も問題ないかな。」
満場一致で決まり、俺たち4人でパーティが結成された。他のメンツへの説明などは今日の夜ご飯の時間にアリスがやってくれるらしい。
「それじゃあ、せっかくパーティになったんだしパーティ名みたいなのがあったほうがいいよね。一応ちょっと考えてて、《ラビット・アサルト》なんてどうかな?」
「…………」
あのウサギに対する私怨でパーティ組むのは構わんけど、パーティ名にすんな。
愉快で間抜けで、それでいて強い、のちに「トップ」と呼ばれるそれの第一歩であった。




