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大変ご無沙汰しています。覚えておいでですか?
このパーティーでは必ず同伴することが 義務付けられている。
大体は婚約者を同伴する。もしくは父兄に恋人を紹介しようと恋人同士での参加というものもある。
相手がいないものは兄弟ということもある。
当たり前のことであるが1対1でである。しかし、その常識は今目の前で覆されようとしていた。
今、扉から会場に入ってきたのは1対1どころか1対4であった。言わずもがなヒロインと攻略対象者である生徒会役員の面々である。
それまでざわめいていた会場は彼らが入ってきた途端静まり返った。
皆の注目を集めているのがわかっているのだろう。彼らは満面の笑みをたたえていた。
そしてそれぞれの婚約者がいる場所へやってきた。
私もいるけれどね。
宮脇様の婚約者である綾乃様は表向きは体調不良で休んでいることになっているが、実際はあの彼の元へ旅立った。そのことを宮脇様は知らない。ヒロインに夢中だったからね。
絵里花様、千代美様は出席されている。
それぞれご兄弟が親類の方を同伴されている。
二人ともわかっていた事とはいえ顔色はあまり優れない。
彼らの今後のことを思って胸を痛めているんだろうな。あれだけ嫌な思いをさせられたというのに二人とも優しいですね。
そんなことをつらつら考えていると彼らが私達の所へたどり着いた。
「沙耶…今夜は綾乃は来ていないのか?話しがあったんだが…」
宮脇様が私に聞いた。
「宮脇様…綾乃様は体調を崩されて、もう3日もお休みされていますのに御存知なかったのですか?」
冷ややかな口調で答えると、やや怯んだ様子。
「本人がいないとは…しかし、全校生徒と父兄が揃っているし…」
最後の方は小声になっていたけれど、バッチリ聞こえましたよ。
気を取り直したように意を決したような表情になりふざけたことをのたまわってくざさいましたわよ。
「本人はいないが、ここで宮脇家と神宮寺家の婚約を破棄する。そして美由…大沢美由を新しい婚約者とする」
その宣言にある人は頬染めて、ある人は諦めの表情で、そして私は益々冷ややかな口調で。
「当事者である綾乃様がいらっしゃらないところでおっしゃることではないとおもいますが」
「どうせ綾乃とは政略だから本人がいなくても当主がいればいいんじゃないか?」
もはや人間としての最低限の礼儀もわからなくなっているなんて…。そんな私達の会話に入ってきた方がいる。
「会長…何を言っているんだ、まだ美由は選んでいないんだから、とりあえず婚約破棄だけでいいだろう」
副会長の祐輔様が割り込んだ。
「そうだよ会長。まだ美由の相手は決まっていないんだから」書記の九重朋樹君も口を挟む。
「…ということだ。絵里花との婚約も破棄させてもらう」
「他に好きな人がいるからね。僕も千代美との婚約を破棄する」
祐輔様、朋樹君がそれぞれ絵里花様と千代美様に婚約破棄をつげる。
絵里花様と千代美様はギュッと口を閉ざしたまま何も答えられない。そんな彼女達を不思議そうにしていた。絵里花様はまだしも、千代美様が何も答えられないなんて今までからすると不思議ですものね。
もう一人の攻略対象者の加賀条様は少し離れたところで傍観されている。「皆様、お家同士で話し合うべきことを、このような公の場で話すことなのでしょうか?」
何がムカついたって一番はこれ。ゲーム上だったら悪役令嬢の悪事をばらして婚約破棄を言い渡す場面。
でも、悪事なんていていない。なら家同士の話し合いですませれば良かった話。
こんな公の場でする必要がない。
いずれ、公になる話だとしても。
好きな人ができた。じゃあ婚約破棄してその人と婚約するっていう簡単な話ではない。政略だから、そんな簡単な話ではないのだ。二人だけの問題ではないのだ。
「そういうところが、君達がこの学園に相応しくないところだ。署名も全校生徒の8割程集まっている。よって会長、副会長、書記をリコールしたいと思う」
そう協力者である彼らが現れた。




