第40話 登校日(屋上編)
屋上に到着すると、風が少し強く感じた。
空は晴天で雲一つなかったが、やっぱり山岸さんと二人きりになるのは緊張する。
「ごめん、気を遣わせて…」
俺は照れくささと不安が入り混じった気持ちを隠せずに、そう言った。
山岸さんは少し肩をすくめてから、優しく笑った。
「大丈夫!私も話したかったし☆」
その言葉に、また胸がざわついた。
心臓がドキドキしているのがバレるんじゃないかと思った。
しばらくお互いに沈黙が続いた。
その空気が耐えられず、俺は話を切り出すことにした。
「…あの、夏休み、ほんとうに楽しかったね。」
俺がぽつりとそう言うと、山岸さんの顔が少し明るくなった。
「うん、超楽しかった☆」
山岸さんは嬉しそうに笑ったが、何か考えているような表情も浮かべていた。
「あ、あの、、今朝の事なんだけど…」
俺が続けると、山岸さんは少し焦るように口を開いた。
「あ、やっぱその事だよね。えっと、あれは…なんというか、急に恥ずかしくなっちゃって…」
山岸さんは、少しだけ顔を赤らめながら、視線を逸らした。
俺はその答えに驚いた。
「そ、そっか…俺も無神経というか池田に話過ぎたわ。ごめん。」
「大丈夫!ってかちょっと嬉しかったし…」
そう言うと、山岸さんはニコリと笑った。
その笑顔に、俺の心臓がまた跳ねた。
「これからも…えっと、仲良くしてもらえるかな?」
俺の言葉に山岸さんは少しだけ驚いた表情を見せた後、またあの柔らかな笑顔を浮かべて言った。
「うん、もちろん!これからもたくさん話そうね!」
その言葉に、胸の中の不安がすっと消えていった。
今までのモヤモヤが一気に晴れた気がして、俺は心の中で小さく息をついた。
その後、しばらくの間、屋上で話し続けた。
この瞬間だけは、どんなに時間が経っても止まってほしいと思うほど、心が満たされていた。
「そろそろホームルーム始まるし戻ろっか!」
山岸さんがそう言った瞬間、俺も現実に引き戻された。
「う、うん…」
教室に戻ると、俺たちは何事もなかったかのように席についた。
心の中では確実に何かが変わった気がした。