第39話 登校日(教室編)
教室に入ると、山岸さんは小林さんと楽しそうに話をしていた。
ふと山岸さんに目を向けると、それに気付いた山岸さんは一瞬、俺を見てすぐ視線を外した。
避けられている…?いや、違う気がする。
避けられているというよりは――恥ずかしがっている、のか?
いやいや、何を勝手に変な方向に考えてるんだ、俺。冷静になれ。
けど、夏休みの出来事を思い返すと、どうしても期待してしまう自分がいる。
距離が近づいているのは事実だし、あの朝の反応だって――いや、深く考えすぎか?
「黒瀬、何ぼーっとしてんだよ」
池田が俺の背中を再び軽く叩く。
「いや、なんでもない」
慌てて言い訳しながら山岸さんに目をやると、小林さんと話しているその横顔がふと寂しそうに見えた気がした。
なんだろう、この胸のざわつきは。
「黒瀬ー。早く席つかねぇと先生が来ちまうぞー。」
池田に促され、俺は席に着いた。
けど、どうしても気になる。
俺は心の中で小さく息を吐いた。
朝礼が終わり、俺はタイミングを伺っていた。
山岸さんに話しかけるべきなのか、それとも何もせず静かに過ごすべきなのか――。
池田はというと、机に突っ伏している俺をからかいながら隣でスマホをいじっている。
「なぁ、黒瀬。お前さ、そんなに気になるなら素直に話しかけりゃいいのに」
池田がニヤニヤと俺を見ながら言った。
「別にそんなつもりじゃねぇよ!」
慌てて否定したものの、自分の声が妙に大きかったことに気づき、周囲の視線がこちらに集まるのを感じてしまう。
ふと見ると、山岸さんもこちらを見ていた。そしてまた、すぐに視線を外した。
やっぱり俺のことを意識しているのか…?いや、それとも避けられているのか…?
昼休みのチャイムが鳴ると同時に、山岸さんは友達の小林さんと一緒に席を立った。
何か話しかけるチャンスを失った気がして、俺は机に突っ伏す。
「ダメだな、お前。仕方ねぇ、俺が一肌脱いでやるよ」
池田が立ち上がると、俺の制止を無視して山岸さんのほうへ歩いていく。
「おい、ちょっ、待てよ!」
俺が声を上げるが、池田は振り返りもせず山岸さんに話しかけた。
「あのさ、山岸さん。黒瀬が話したいんだって。」
「えっ…?」
山岸さんは驚いた表情を浮かべて俺を見る。俺も同じくらい驚いていた。
「いや、そんなこと…!」
俺が否定しようとすると、山岸さんが少し頬を赤らめながら口を開いた。
「…じゃあ、屋上で話す?」
その言葉に俺は固まった。
どうする、俺?
何を話せばいい?
けど、これはチャンスだよな。
「…うん」
俺は腹を括り、立ち上がった。
屋上で何が起こるのか、まだ何もわからないけれど、今はただ、山岸さんと向き合うことを決めた。




