3 戦場の背中合わせ
ーー私の一族は王族を守るために存在していた。立国のときからひたすら王族を守る影の仕事、それがわが一族の天命だったのだ。
そのうち一日中守れるよう、王の養子に迎えられるようになった。そうすればいついかなるときでも王の側にいられるからだ。それが何代も続いて今に至った。
王女といっても形だけの身分。頭の中はいかにして王族、第一王子を守護することに占められていた。自由はない。ひたすら王族と国家を守ることが私の人生のすべてであった。
紛争地域に黒薔薇隊が参戦した。ジータ王女はテクラの名のまま部隊にいた。
ローズは黄金色の鎧を着て目立っていた。
メイドたちの戦闘服はメイド服だった。もちろん内側は《くさりかたびら》に鉄の胸当て、手甲にすね当てで守られていた。
「この格好、戦場の雰囲気にそぐわないですね」
テクラが言うと、メイド長が憤慨した。
「メイドの戦闘服はあくまでメイド服です。たとえ戦場であってもそれは変わりません!」
実際、黒薔薇隊の働きは凄まじかった。
明け方の白兵戦で、国境守備隊以上の働きをした。
向かってくる敵兵を次々と斬り伏せた。
朝日のあたる小高い丘に一人で登ったローズ。四方八方から敵がにじり寄ってくる。
テクラは一人で突破口を開いて頂上でローズと合流した。
「テクラ、お前は私の背後を守れ!」
「はい、ローズ様!」
ーーそうだ。今は黒薔薇隊の一員にすぎない。この命尽きるまでローズ様についていこう。
テクラはローズの背後からやってくる敵を一刀両断に斬り伏せた。さらに襲いかかる敵を蹴り倒して喉をかき切った。その一連の流れは素早かった。
ローズと背中合わせになった。
「お前となら、命を預けられる」
「こちらこそ、背後を心配しなくていいので」
テクラがにっこり笑った。
ズサッ!
丘を降りた二人の手前に槍が刺さった。
槍の向こうに馬上の騎士がいた。全身黒ずくめの騎士だ。馬が小さく見えるほどの巨躯。
「あいつだ。《黒のガッディ》だ」
遊軍の黒薔薇隊のメンバーが集結した。メイド長のファビオラが大薙刀をローズに手渡した。
「この東方の大陸から取り寄せた青龍偃月刀がお前をたたっ斬る!」
ローズが指笛を鳴らすと、白馬がやって来た。
馬上のローズと馬上のガッディが向かい合った。
ガッディの鎧の隙間から不気味な黒いオーラが流れていた。
大将同士の一騎打ちとあって、小競り合いは収まった。
敵味方関係なくどちらが勝つか息を呑んだ。
白馬は前進した。
ガッディの黒鹿毛馬も前進した。
途中、白馬のスピードが上がる。
ドドドッ──!
さらにスピードが上がる!
ガッディが槍の切先をローズに向けようとしたとき、すでに白馬は黒鹿毛馬を追い越そうとしていた。
(──何だあの白馬のスピードは!?)
ガッディは戸惑う間も与えられなかった。
ローズの青龍偃月刀が振り下ろされた。
ズバッ────!
右肩から左脇まで斜めに袈裟斬り一閃した。
噴水のように血潮が飛び散った。
馬上から崩れ落ちるガッディ。
地面に叩きつけられた。
即死だった。
青龍偃月刀をたかだかに掲げるローズ。
「我はガッディを討ち取ったり──!」
勝利の雄叫びをあげた。
朝日を浴びたその姿は、黄金色に輝いていて神々しかった。
その後、休戦協定が結ばれたが、相手国は譲歩を強いられてわが王国の大勝利となった。




