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アナバチ性ミントブルーうさみちゃんシティ  作者: 夏果和 なまり


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12/15

4ー₍ᐢ.ˬ.ᐢ₎₍ᐢ.ˬ.ᐢ₎

〝quzx:噂にしろ陰謀論にしろ、厄介なのは彼らが「嘘を言っている」と微塵も自分自身を疑っていないことだ。

 あれから急な成長を続けるうさみちゃん市は、全国各地から、全世界から、市民を集めている。かき集められた市民たちは、うさみちゃん市民が皆そうであるように、「徳を積む」という概念の中で生きる。かき集められた市民はあらかじめ、なにかしらの洗脳を受けている状態に近い。人為的な洗脳、もしくは、ブレインレイン社が出稿する多大な広告による無意識の洗脳。

 彼らは「徳を積む」ことで、周囲より特別な待遇を受けることができる。徳を多く積んだものだけが属することができる人間階層的エリアがある。そこでは「一般人」と言われている人間たちの知らない、豪奢で欲に塗れた生活を送る人生が待っている。「一般人」がどれだけ身を粉にして働いてもたどり着けないエリアだ。そういう階層がうさみちゃんシティには確かにあって、そして誰もがその身分を目指している。どんなに不遇な人生にも、世界が一瞬で裏返ったような転回は必ずあるものだ、と、人間は幼い頃から刷り込まれ続けるものだ。それが美談として。そこに付随するフィクションは世界に、無限に存在しているのはご存じのとおり。

 徳を積んだ者が、徳を積み続けた者が、いったいどうなるか?

 それは単純で明快だ。人間の退屈という人生の隙間を埋めるためのエンターテインメントへと直結する〝情報〟になるのだ。徳を積んだ者には、個性という名の、世界じゅうでもっともドラマチックな、成功へのゴールのためのストーリーが付与される。そこには人情というエキスが配合されていて、大衆の誰もが「いつか自分も」と共感を得るようなストーリーに仕上がっているのだ。

 徳を積む行為は金銭によって解決出来るから、個人に与えられたストーリーはいまも増え続けている。止め処ない一方的な供給の過多。それでも人間は忘れっぽく、熱しやすいから、新たなストーリーを持つ人間が現れるとそちらに熱中し、そしてやがて冷め、また新たなストーリーの出現に熱中するのだ。外部からやってくる情報に、人間は魂ごと飲まれ続けている。

 かつて、まだうさみちゃん市ではなかったころの街を知っている者は少ない。どの街もそうであるように、あの街は転出超過によって市民が数年で激減し、存続の危機に陥っていた。そこで街は「UFOのまち」という施策を打って、転入者を集めようとした。実際、かつてこの地にUFOが降りたという都市伝説をもとにしたもので、一時期は研究センターも設立された。しかしUFOが降りたという話はあまりに根拠が乏しく、迷信のレベルにすら至っていなかったので、プロモーションとしては大失敗に終わった。誰もが「信じていなかった」のだ。

 ここから推察できることはこうだ。うさみちゃん市の発展の裏にはからくりがある。馬鹿げた理由で転入者を集める前に、人々の意識を操作しているということかもしれない。人々は操られてここへ集まってきているのだ。そして、彼らは思いこみのまま、世界を見ているに過ぎない。彼らの脳が、彼らに『すてきなうさみちゃんシティ』を魅せているのだ。だから彼らは、自分たちの内部にある情報を微塵も疑っておらず、その歪んだ情報をさらに撒き散らす。

 かき集められた市民で構成された街の表情は変わった。今までの道徳心のある街から、暴力と宗教的思想に支配される街に代わってしまった。むしろそれをブレインレイン社は望んでいたのかもしれない。

 思想も、個別差も、自由を望む気持ちもある。考えもある。けれど彼らが口にするのは常にネットやSNSで得た「情報」――知識ではない――の再生産ばかりで、彼らなりの「意思」は相変わらずどこにも見当たらない。

 彼らのほとんどは、社会の中で疎外感を持って生きてきたので、〈社会的連帯の渦中にいる〉という事実に憧れているようにも見える。街に満ちているのは純粋で無知な他責のつぶつぶだけだ。

 ここにいる私という肉体はどんどん穢れていく。操られた誤った思想を抱くものたちに囲まれるような生活では、私そのものが穢れていく。彼らの肉体のまわりには誤った思想という情報がたくさん付随していて、それは周囲に影響する。脳と記憶の関係と一緒だ。

 この街をもとどおりにするなら、壊す以外の方法はないのだろうか。〟

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