金銀の輝きにキスを
今、怪盗レイナが取るべき行動は一つ。ピンクダイヤ窃盗の犯人として名乗りを上げることだ。そしたら、どこのコソ泥か知らないが、ソイツは怪盗レイナの濡れ衣を着せられずに済む。一方でレイナは、名前を売り出すことができる。ウィンウィンである。
私は洗面台の鏡を見ながら考えていた。
「やっぱり、ウィッグとか欲しいのかなあ」
鏡の向こうの私は、白銀色に染まった髪の毛を弄っている。怪盗レイナと同じ色の髪だ。
怪盗レイナとして名乗りを上げるというのは、即ち、その姿を晒すということ。仮面で顔を隠しているとはいえ、この特徴的な色の髪の毛は、レイナの知名度が上がるほど正体バレの危険性を孕んでくる。当然、それ以外のレイナを私と結びつける情報は出ないように気を配っているけれど、やっぱり不安になってきた。何の因果か警官と事実上の同棲をしてしまっているという事実が、その不安を加速してくれる。
「れーな!なーに悩んでんの?」
楓が、後ろから抱き着いてきた。鏡越しに見える楓は、私の左肩に顎を乗っけて目を細めている。
「楓はさあ、私が髪染めるならどんな色にしてほしい?」
問われた楓は、暫く「んー」とか唸っていた。私の銀色の髪の束と楓の茶髪の束を混ぜたりして弄っている。
「やっぱり金色かなあ」
「金髪、かあ……」
「ああ、勘違いしないでね」
楓は、今度は右側に回り込んで、ひょいと私の後ろから顔を突き出して鏡を覗き込む。
「私が金髪に染めたいなって話」
「警察って、髪染めてもいいの?」
「残念ながら、染めるのは禁止されてるんだよねー。私の茶髪でもギリギリってくらいで、結構規定が厳しいんだ」
「面倒くさいんだね」
「そうだねー。まあ無いとは思うけど、警察辞めたら金髪にしてみたいかも」
「なんで?」
「玲奈が銀色でしょ?じゃあ、私は金髪だと綺麗じゃん?」
「はあ?わけわからん……」
そこで、楓は私の頬にキスをした。慌てて楓の方を振り向くと、楓は少し離れた場所でニヨニヨと笑っていた。
「おやすみのキス。おやすみなさい!」
よく分からない奴だ。私は小さく溜息を吐いた。




