↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪盗レイナ  作者: あさねこ
怪盗レイナと秘密結社の陰謀
61/65

和解

 初めて、怪盗レイナの盗品が取り返された。札幌の美術館から盗み出された、エメラルドのネックレスである。ただ、レイナ本人は惜しくも取り逃したという。

 北海道ローカル局のインタビューに、レイナを追い続けているという刑事は語る。

「今回は被害がなかったとはいえ、既にレイナの被害は甚大な額に及んでいます。……全ての盗品が取り返されること、そしてレイナを捕まえることが……」

 最後まで聞き届けず、私はテレビを消した。

「楓さん、緊張しちゃってカチカチじゃん。あの人、地上波って初めてだっけ?」

 ソファの横で我が物顔で寛いでいるのは、詩華奏那。一応、ここは怪盗レイナのアジトということになっている。当たり前のような顔をして上がり込むのは大概にして欲しい。

「いつだったかなあ。駅前でテレビ局の取材してるのにすれ違ったのが一回だけ。たぶん2秒くらい、見切れるくらいは映ってたと思う」

「何それ」

 奏那はヘラヘラと笑っていた。

「レイナさん的にはさあ」

「うん」

「北海道のやつって、返しちゃって良かったの?」

「いいよ、別に。そんなに欲しかったわけじゃないし。それに、たまには楓にも花を持たせてあげないと。クビになっちゃうかも」

 これは本当。怪盗レイナを逃し続けていた楓は、警視庁内では結構厳しい目を向けられていたらしい。楓の同僚の伊織さんから聞いた。だから、どちらにせよ、そろそろ楓の立場が上がるようなパフォーマンスはやるつもりだったのだ。それが千佳の登場で多少タイミングが前後したが、特別に大きな想定外でもない。


 朔弥と合流したのは、北海道からの帰りの飛行機の機内だった。日本人でプライベートジェットを持っている奴を初めて見たかもしれない。

「初めてだよ、千佳のこんな幸せそうな寝顔を見るのは」

 私の膝枕の上で静かに寝息を立てる千佳を見ながら、朔弥は呟いた。

「どうするの?」

「どうする、って?」

「私のこと。何か処罰でもしたいんじゃないの?」

 言うと、朔弥は静かに笑う。千佳を起こさないよう気遣っているのか。

「別に、煮て食おうってつもりはないよ。僕らは、あくまでも千佳のことが最優先だ。その千佳が君に心を許しているんだ、君はもう、僕らの重要な客人だよ」

「極端なもんだね」

「そうさ、極端なもんだよ。変わった組織なんだ、僕らは」

「自覚してるのね」

「そりゃあね。僕だって、極端な変人じゃあない」

 思わず酷い悪口が出そうになるのを耐える。朔弥は続けた。

「千佳は、いつか僕らから独り立ちすべきなんだ。今回、そのことを改めて認識したよ。だけど、残念ながら、僕らにはそういう機能がない。外からの刺激はいつか必要になることだった。そのタイミングが、今回は多少早まっただけだと思っているよ」

「何よ、私に子守り役でもしてもらおうっての?」

「むしろ逆だよ。君は、これからも千佳を引きずり回してほしい。千佳の健全な成長のためにね」

「怪盗なんて、健全なわけないけどなあ」


 結局、事態は丸く収まったらしい。千佳が元気になって、私と千佳は和解して、それからレイナの知名度が上がった。

 奏那は、私の肩に凭れながら言う。

「まさか、あの千佳すら落としちゃうなんて。とんでもない人たらしだよ」

 なぜだか知らないが、奏那はどこか不満そうだった。それに、いつもより距離が近い気がする。暑苦しいからやめてほしい。

 なんとなく奏那の頭を撫でてやると、猫みたいに嬉しそうに体をこすりつけてくる。可愛いやつだ。裸族でさえなければ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。