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怪盗レイナ  作者: あさねこ
怪盗レイナと秘密結社の陰謀
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詩華奏那の苦言

 ビルの隙間を右に左に縫っていき、地下道を潜ってさらに進む。暫く歩くと少し開けた場所に出て、都内なのにやたらと人通りの少ない道に出る。ここに面しているビルの一つが、丸々怪盗レイナのアジトとなっている。

 地下室にはこれまで盗んできたお宝を保管していて、仕事をするのに使うのは地上部分。2階にちょっと広めの部屋があって、だいたいそこで計画を練ったりしている。

 金属扉を開けて、部屋の中に入る。しかし、私は部屋の中を一目見て、後退り、扉を閉じた。

 部屋の中から慌てているようなバタバタとした音が聞こえた。暫くして、ドアが少しだけ開いて、隙間から顔を出したのは詩華(うたげ)奏那(かなた)

「ごめーん……。もう入っていいよ」

 溜息を吐いた。

「あのさあ。軽率に脱ぐなって、そんなに難しい?」

「だって、裸のほうがリラックスできるじゃん?」

「それには同意しかねる」

 この裸族は、ちょっと前までは暇があれば私の部屋にやって来ていた。だけど、三宅くんが来てからはアジトの方に来るようになっている。理由は知らないが、大方男の子がいると脱げないからだろう。そもそも脱がなければいい話だ。

 秘密にしていたアジトだが、今となっては認知している人間も増えつつある。私以外に、奏那もそうだし、柏木朔弥も当たり前のような顔をしてここにやってくる。(リン)深蘭(シェンラン)も、奏那ほどの頻度じゃないが立ち寄ることがある。朔弥がたまに連れてくる八十八(やそや)双谷(そうや)さんはかなりのレアキャラ。

「奏那は?今日は仕事休みだったの?」

「んーん。朝の情報番組で映画の宣伝だけしてきた。見てなかったの?」

「今日は朝から朔弥に呼び出されてたからね。その時間はテレビ見てないかも」

 奏那を押しのけて、ソファに腰を捻じ込む。テーブルの上にノートパソコンを置くと、奏那は私の肩に顎を乗せるようにして画面を覗き込んでくる。

「レイナさんのお仕事はどうなの?最近頑張ってるみたいじゃない」

 この間の高校潜入作戦からしばらく経った。怪盗レイナの活動はというと、まあ順調なものである。美術館で作品を譲渡してもらったり、宝石店で気に入った商品をレイナのサイン入りカードと交換したり。その活動は多岐にわたる。

「まずは世間に名前を知らしめてやりたいからね。となると敵は今流行りのドラマ、アニメ、映画とか。そういうのと張り合うには、とにかく動くしかないのよ。あんたも分かるでしょ?」

 奏那は今をときめくアイドルで歌姫。こないだ映画の主演をやるらしいことも発表されていた。バラエティー番組にも引っ張りだこだし、テレビで彼女を見ない日はない。とまでは言いすぎな気がするけど、それくらいあっちこっちで顔を見る。

 周りに見せないだけで、本当は信じられないくらい忙しくて大変なはずだ。それなのにここにやってくるのは、安心できるからとか、何か彼女なりの理由があるのだろう。それにしたって、すぐ脱ぐのはやめてほしいところだが。

「そうだろうけどさあ。毎度毎度、私と並んでトップニュースを独占してるじゃない。知名度はもう十分なんじゃないの?」

「そんなことないよ。新しい玩具でも出ようもんなら、衆愚はすぐにそっちに飛びつく。そしたら、知名度なんていくらあったって忘れられるもんなのよ。仮にもトップアイドルなんでしょう?心に刻んでおくことね」

 奏那は、私の肩に体重を預けたまま「説教きちー」とか言っていた。邪魔でキーボードを打ちづらい。

「何調べてんのさ。今度は警察署にでも侵入する気?」

「うーん。……奏那は朔弥の組織について、どれくらい知ってるの?」

「何よ、急に。秘密よ、ヒ、ミ、ツ。言っちゃいけないことがあるんですからね」

「じゃあ、朔弥が付き従ってる女の子についても秘密なのね」

「付き従ってる?……ああ、千佳ちゃんのことね」

「知ってるんだ」

「あっ」

 奏那は、やっちまった、という感じで口を押さえていた。キョロキョロと周りを確認してから、奏那は続ける。

「千佳ちゃんと会ったの?」

「まあね。レイナに興味を持ってもらえたみたいだったけど、呼び出されてすぐに飽きられちゃった」

「あー。あの子らしいっちゃらしいか」

 私は飽きてないよ、と良くわからないフォローが入る。そりゃあ良かった。

「千佳ちゃんには、たまにお茶会に呼ばれるんだ。アニソンとか歌えってリクエストされるの」

「へえ。やっぱあの子、サブカル趣味なのね」

「かなりの、ね。たまに全然知らないアニメの話してくるから、もう話を合わせるのが大変で。オタクは一人でやってろっての。あっ、この話は本人には絶対秘密ね?下手すりゃ殺されちゃう」

「殺されるは言い過ぎじゃないの?」

「チッチッチッ、分かってないなあ。私がやってた仕事忘れてない?あの子の場合はマジでやりかねないの。あのお姫様とどういう関係なのか知らないけどさ、振る舞いには気を付けなよ?でないと……」

 奏那は、喉元を掻き切るようなジェスチャーをしてみせる。ナイフか何かを握る演技のようだが、握り方にやけにリアリティがあって怖い。映画の主演に大抜擢されるわけだ。関係ないのかな。

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