拘束と仲間
やっぱり、楓の手足の拘束を解くわけにはいかなかった。だって、今楓の拘束を解いたら何らかの手段で警察に連絡を取られてしまうだろう。そしたら今回の計画は水の泡だ。楓には申し訳ないが、手足はもう少し拘束されたまま過ごしてもらおう。
そういうわけで、当然シャワーを浴びるにも手足を縛られたままだったのだが、シャワーを浴びてさっぱりしたはずの楓はむしろゲッソリしていた。
「……大丈夫?」
「なんか、人間の尊厳を失った気分」
「家じゃ裸族のくせにそういうの気にするんだ」
しかし、楓は何も言い返さない。やり返してくる元気もないらしい。これは相当にメンタルがやられている。
楓の服を脱がせてシャワーを浴びさせるまではなんとかなったのだが、着せるのは面倒で、裸の上にタオルを被せてソファの上に転がしている。
「どうしよう。また放置して部屋の中に糞尿垂れ流されるのは嫌だし……。トイレに座らせて放置でもいい?」
「やだよ、痔になっちゃう」
「じゃあ……ペットシーツかなんか買ってきて、」
「それも嫌!」
なんだか楓の元気が戻ってきた気がする。基本的に体力オバケなんだ、こいつは。
「うーん、困ったなあ。いっそ、朔弥に面倒見てもらうか……」
「朔弥?やっぱり、朔弥さんもあんたのお仲間だったってことね!まとめて捕まえてやるんだから!」
「ん?楓って、朔弥に捕まってこうなったんじゃないの?」
「違うよ。男の人ではあったけど。朔弥さんって、髪が白っぽい人でしょ?」
「白っぽいって……。あんた、本当に他人の顔とか興味ないよね」
というか、やっぱり朔弥本人が楓を捕らえたんじゃなかったのか。そりゃあそうか。アイツ、なんだかデカい組織のそれなりに偉い地位に居るっぽいし。直接私に接触してきたのが、むしろ例外と捉えるのが正しいのかもしれない。
朔弥だって腕っぷしは強そうだが、筋肉バカの楓の全力の抵抗を受けて正面から勝てるかというと、怪しい気がする。朔弥より肉体派の部下とかに任せたのだろう。それだったら、私はぽろっと朔弥との繋がりをバラしてしまったことになる。アイツもいつかバレるもんだと思ってただろうけど、後で謝らないとな。
「ねえ、聞いてる?」
手足を縛られてソファの上に転がっているしかない楓が、ぶうたれた様子で何か言っていた。
「ごめん、聞いてなかった」
「やっぱり聞いてないんじゃん!……ねえ、朔弥さんが嫌いってわけじゃないんだけどさ。あんたのお仲間に女の人っていないの?」
「楓なら知ってるでしょ?私が友達作るの下手なこと。朔弥だって、奇跡的にできた……仲間、と表現するのもアレは違うけど。まあ、朔弥に聞いてみるよ。女の子のお仲間が居ないかって。居なかったら、トイレに永住か、朔弥に頼むか……ペットシーツ?」
「それだけは絶対に嫌!」




