溢れ出る想い
部屋に行けば分かる。朔弥にそう言われた私だったが、その通り。朔弥に用意されている自宅で、部屋に戻った私はなんとなく状況を理解した。
両手両足を縛られ、目隠しと猿轡まで付けられた楓が部屋のベッドの上に転がされていた。足音を聞いて誰か来たのを察したのか、芋虫みたいにのたうち回りながらモゴモゴ言っている。しかし、ご丁寧にベッドから落ちないようにロープで固定されているせいで、ベッドをギシギシ鳴らすことしかできていない。
「あー。なんていうか……。お疲れ様」
私の声を聞き分けたのだろう、楓の全身運動が止まる。猿轡のせいでフガフガとしか聞こえないけど、多分「玲奈!?玲奈なの!?」とか言おうとしている。
これではまともにコミュニケーションをとれないので、とりあえず猿轡だけ外してやった。
「……ッ、玲奈?何なのこれ!……ねえ、目隠しは?外してくれないの?」
「それは……ちょっと待ってね」
流石に、楓に高校の制服着てるアラサー女を見せるわけにはいかない。制服を着替えて、ついでのシャワーを浴びてから、部屋に戻った。
「ごめんね、お待たせ」
言いながら目隠しを外してやる。その瞬間に、楓の目から涙が溢れるのが見えた。しかし、泣いているところは見せたくないのであろう、すぐにそっぽを向いてしまう。
「何も言わないで居なくなっちゃって。会えなくなっちゃうんじゃないかって思っちゃった」
出始めた涙はなかなか止まらない。楓の声は震えていて、必死に押し殺そうとしているのだろうが、抑えきれなかったのだろう、鼻をすする音が何度も聞こえる。
「それは……ごめん」
楓に怪盗レイナの計画を伝えてしまうわけにはいかなかったけど。でも、ここまで心配してくれるのは、私の想定不足だった。何も言い訳できない。
言葉を失う。楓のすすり泣く声だけが部屋の中に響いていた。
「あと……あのさ」
楓が口を開く。
「ちょっと……トイレ行きたいかも」
「……なんて?」
「あっ、ちょっとヤバい、なんか来たかも……」
「えっ、やだやだ、ベッドの上で漏らすなんてダメだからね!?」
慌てて楓の拘束を解こうとする。しかし、楓の体はベッドに固定されていて、これが結構しっかり結わえ付けてあるので、なかなか解けない。ようやくベッドに固定するロープを解いて、しかしまだ手足を縛るロープがある。じれったい、一旦このままベッドから運び出すことにする。それで抱きかかえた瞬間だった。
「バカ、そこ押されたら……ッ、」
何かがとめどなく噴き出す音。それと同時に、楓の下半身から垂れてくる温かい液体。さっきシャワー浴びたばかりなのに。ただ、今夜寝るベッドだけは無事であるようだった。




