マスコミュニケーション
『買ったばかりだったのに。ホント、怖いですねー』
お昼のワイドショーでのインタビュー。詩華奏那はヘラヘラしながら語る。
先日、詩華奏那が盗難に遭ったという。犯人は、怪盗レイナ。正確には、怪盗レイナと名乗る予告状が、盗難の前日に届いていたのだとか。盗まれたのは、その数日前に買ったばかりだった金の延べ棒。
『資産運用とか興味なかったんですけどね。有難いことにお仕事をたくさん頂いているので、なんとなく買ってみたんです。そしたらすぐに盗まれちゃって。困りますねえ』
どうにも、困っているようには見えない。嬉しそうなような、面白がっているような。インタビューを受ける奏那は、始終笑顔のままだった。
『怪盗レイナですって。不謹慎ですけど、アニメや漫画みたいで面白いですよね』
私はテレビを消した。
「本当に、余計なマネはやめてくれる?」
ソファで横に座って私にもたれかかっているのは、詩華奏那。この前の一件以来、暇があれば私の元にやってくるようになっていた。いくら言ってもやめる気はなさそうで、「週刊誌だけは連れてくるなよ」とだけお願いしている。
今回の一件は、私の仕事ではない。この詩華奏那とかいう迷惑な女が、勝手に予告状を偽造して怪盗レイナを騙ったのだ。
「いいじゃない。あなたは名前を売れて、私も満足。ウィンウィンでしょ?」
奏那は私に抱き着いて、首のあたりに顔を埋めている。……顔が近い!
「ね、怪盗レイナさん。私の金の延べ棒、盗んでくれる?」
言って、私の手にずっしりとしたものを握らせてくる。ちょっと顔の向きを間違えたら奏那とキスしてしまいそうで、あまり首を動かさないように目線だけ手元に向ける。そこにあったのは、大きめの金の延べ棒。重さと金の価格からして、時価1000万はくだらないだろう。
「これじゃあ、足りない?何がほしい?私、なんだって盗ませてあげる。なんでも。そう、私の……」
言い切る前に、私は奏那の口に金の延べ棒を押し付けて黙らせる。
「いい加減にしなさい、お金じゃ買えないものだってあるのよ。そもそも、何の苦労もなく手に入れられるお宝なんて興味はないの。厳重な警備を潜り抜け、堅牢な金庫を突破して、それで手に入れるからこそ感慨があるってもんなの」
奏那は金を咥えたままでモゴモゴ言っている。何を言いたいのかは分からないが、不満そうな表情をしている。
唾液まみれになった金の延べ棒を持って、奏那が尋ねる。
「じゃあ、怪盗レイナさんは次は一体どこの何を盗むつもりなの?」
延べ棒に付いた唾液を服の裾で拭いている。汚い。テレビの向こうのスターなんだから、その辺の立ち居振る舞いには気を付けてほしいものだ。あとで朔弥にチクっておこう。
「んー。どうすると思う?」
「ええー、クイズ?そうだなあ、宝石店とか?それか……銀行強盗?」
「そういうのもいいかもね」
「違うの?じゃあ、どこを狙うわけ?」
「さあ、どこだろう」
「答えは?教えてくれないの?」
「ふふふ」
実際のところ芸能人っていくら稼げるのか軽く調べてみたら、稼いでいる人で年に10億って感じみたいですね。ちなみに、一番は大谷翔平の200億です。




