偽善者たちの葛藤
警視庁の廊下の突き当たり。人通りもなく、人目につきづらい場所だ。
「一体、何から問い詰めるべきだろうな」
「いおりん、顔怖いよ……?」
田沼伊織と樫本楓。楓は、伊織に呼び出されていた。
「分からないとは言わせないぞ。……お前は、怪盗レイナの何なんだ?」
周りを気にしつつ、伊織は尋ねた。
「何って、レイナは泥棒で、私は警察で……」
「しらばっくれるつもりか?なら、単刀直入に言おう。ここのところ、お前はずっと帰宅していないらしいことが周囲の住民への聞き取りから分かっている。それと怪盗レイナは、どういう関係にある?」
「あちゃー、バレちゃった?」
「バレちゃった、じゃない。上に断りなく変なところに泊まり込んでいるようなら大問題だぞ?まだこのことは私しか知らないけど。お前だってバカじゃないだろ?どれだけ不味いことをしているのか分かってるはずだ」
楓は答えに窮した様子で、口を噤んで伊織に上目遣いしていた。しかし、やがて目を逸らして零す。
「レイナは、私が捕まえなくちゃいけないから。怪盗レイナを捕まえるまでは、やめるわけにはいかないの」
沈黙。楓は目を逸らして黙ったままで、伊織は何を言うべきか迷っているのか、口を開けたり閉じたりしている。結局、先に沈黙を破ったのは楓だった。
「そういえば、奏那ちゃんが言ってたよ。これからもよろしくって」
楓はポケットからスマートフォンを取り出して、何か送信する。伊織がメッセージアプリを開くと、楓からの一枚の画像が届いていた。奏那と楓と、もう一人、知らない銀髪の女が写っている写真。伊織はずっと奏那を追っかけていたから分かる。奏那がこんなに笑うことは滅多にない。というか、見たことがない。ぼんやりとその写真を眺めていて、伊織はオタクっぽく口角を上げた。
「……あっ、ねえ、何なのこれ!かなたn……なんでお前が詩華奏那と距離が近いんだ!うらやま……ずる……けしからん!ねえ、待ってよ!」
楓は、すっかり元気になった伊織の声を聞いて笑っていた。




