本当の怪盗レイナ
急に明かりが点いて、一瞬だけ目が眩む。しかし一瞬だけで、怪盗レイナのマスクの光量調整機能のおかげで視界が適当に調整される。そして目が慣れるのに合わせてマスクを通る光量が増加。
私は怪盗レイナの衣装を身につけて、薄暗い蛍光灯に照らされていた。足元を見下ろすと、下着姿の詩華奏那が肩で息をしながら転がっていた。
足元から少し視線を遠くへ向けると、困惑したようにぽかんと口を開けている田沼伊織。「かなたん……じゃない?」とか呟いている。だって、怪盗レイナの髪色は銀色で、しかし奏那の髪色は金色だ。ほんの少し見た目が異なる。あとは胸元か。暫く奏那が身に着けていたせいか、元のスーツより胸元に余裕を感じる。
そして、伊織のさらに奥には、電灯のスイッチに指を掛けている柏木朔弥と、まっすぐに私を睨む樫本楓。
奏那との格闘のせいで息を切らしながら、私はポーズをキメる。
「怪盗レイナ……参上!」
いいじゃん、私。これはカッコいい!……ふふ、思わずニヤけてしまうくらい。
「ださ」
「はぁぁぁぁああ!?」
楓だった。思わずデカい声が出ちゃった。楓の横にいる朔弥もなんだか笑いをこらえているみたい。いつか殺す。それはそれとして。
「いいのよ、私のことは。こっちは?」
足元で無様に転がっている奏那を軽く蹴る。
「それについては、僕が」
朔弥が一歩前に出る。
「今回のことは、責任の所在は全て僕にある。怪盗レイナ、と呼んだ方がいいかな。……と、奏那、楓さん、そして、田沼伊織さん。一旦、この場は解散とさせてもらえないかな。いつか、説明するからさ」
それから三日。詩華奏那は体調不良でお休み、ということになっていた。表向きは。これは表向きの理由でしかなく、その真の理由とは……!
「結婚、妊娠、離婚、不倫。その辺が多いみたいねえ。で、実際その辺はどうなんでっしゃろ、詩華奏那さん?」
私は、リビングでお菓子を食べて寛いでいる様子の奏那に尋ねる。
「不倫って……ww。結婚どころか、彼氏すら作ったことないんだよ?私」
言っておくが、ここは私の家だ。奏那の家ではない。なぜ奏那がここに居るのだろう。……いや、私だって知りたい。
例の件の翌日、出勤しようとした楓が全裸で玄関前にしゃがみ込んでいる奏那を見つけた。すぐ脱ぐのはどうかと思うというのは当然進言したのだが、彼女曰く「何も隠し持っていないのが一番分かりやすい格好」らしい。
しかし、そんな恰好でよく警察に捕まらずに済んだものだ。実際、第一発見者の樫本楓(警察官)は、公然猥褻で現行犯逮捕しようか迷ったそうだ。迷ってないで、こんな迷惑なモノさっさと捕まえてやってほしいものだ。
「そろそろ、まともに話す気になった?」
尋ねると、暫し沈黙した後、小さく頷く。
「じゃあさ、」
私は奏那の首から下にチラリと目をやる。
「まず、服着てくれない?」




