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怪盗レイナ  作者: あさねこ
怪盗レイナと美術館の秘密
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怪盗の予告状

 営業再開したばかりの美術館に、怪盗レイナの予告状が届いた。おしゃれな感じの厚紙で、水墨画の山水図を盗むという旨のことがフランス語で書かれている。

「カッコつけちゃってさあ。日本語でおkって感じ」

 樫本楓が洩らす。楓は予告状をヒラヒラさせていて、呆れ顔で横の田沼伊織の方を見ている。ちなみに、予告状に書かれているフランス語は伊織が読んだ。日本語と英語のほかに、フランス語とドイツ語と中国語を読めるという。

「その予告状だって、貴重な捜査資料なんだぞ。丁重に扱って差し上げろ」

 伊織が咎めるが、しかし、楓は胡乱な目で予告状を眺めているだけだった。

「いいよ、どうせ手掛かりが得られないように細工されてるんだから」

「お前は警察とレイナのどっちの味方なんだ」

「もちろん警察だけどさあ」

「じゃあ、真面目に仕事してくれ」

 予告された山水図というのは、つい昨日から開催されている特別展の目玉となっている。美術館長がレイナの件の直後から再開を求めていたのは、ようやくスケジュールを押さえられたこの展覧会を無事開催するのが目的だったらしい。それだというのに、ようやく漕ぎつけた矢先の再びの怪盗レイナ。館長の禿げた頭は、見たことがないくらいに萎びて見える。

「不躾なお願いですが……怪盗レイナを、今すぐにでも捕まえることはできないのでしょうか」

 消え入りそうな館長の申し出に、楓と伊織は目を見合わせる。

「それができたら、苦労しないんですけどねえ」

 楓は改めて予告状を眺める。

「予告の日時は、明日の20時。今から大掛かりな対策をするのも現実的じゃないし。どうするかなあ」

「人海戦術しかないだろうな。上に掛け合って、できるだけ人を出してもらえるよう頼んでみる」

「その辺の手続きはいおりんのが得意だもんね。よろしくー」

「手続きなんか誰でもできるだろ。上司に連絡して、あとは言われた通りに書類書くだけだよ」

「あーあー、わっかんないなぁー!諸々やっといてね、頼りにしてるよ!」

 そう言って、楓は予告状を伊織に放り投げる。慌てた伊織が放り投げられた予告状を掴まえたが、既に楓は館長室から出てどこかに行ってしまっていた。

「あいつ……!説教覚悟しとけよ」


 一方で、楓は問題の山水図の前までやって来ていた。今日の美術館は通常通り一般客に開放されており、ちらほらと客が歩き回っている。だいたいは年齢が高めの客なのだが、ほんの一部だけ、若い客も歩き回っている。話している声を盗み聞いた感じ、怪盗レイナから興味を持ってやって来た層であるらしい。楓は少しムッとする。

 通路の壁に嵌め込まれた空間に、それは展示されていた。一枚の大きなガラスを隔てて、薄明るいライトが照らしている。水墨画、つまり黒い墨だけで描かれた絵画である。そこにあるのは白い紙と黒い墨だけであるのに、しかし奥深い美しさが見る人を魅了する……のだけど。

 楓は首を傾げる。

「アイツ、こんな地味な趣味だっけ?」

 怪盗レイナが先に盗んだのは、大きなピンクダイヤ。それに比べて、今回の標的は暫し地味すぎる。楓には、そう思えてならなかった。

 曲がりなりにも、怪盗レイナなんて名乗って大それたことをしている奴だ。もっと派手なのを狙ってもよかったのに。……まあ、この美術館に今ある展示品で一番の目玉はというと、確かにコレなのだけど。

 なんでこんなのを狙ったのだろう。なぜ、この美術館に拘っているのだろう。大胆なことを言うならば、怪盗レイナの今回の予告には、もっと深い意図があるような。楓は、そんなことを漠然と考えていた。

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