side.おねえさん1
不肖の弟が、女の子を連れて帰って来た。
数年前からご執心の番さんだという。ようやくだ。
少し背が伸びた弟と共に現れたのは、可愛らしい猫さん。でかした、クラウド。
「あんなヘタレが番でいいの?」
猫さんはリディアちゃんというらしい。
キョトンとこちらを見返す。かわいい。すぐにふにゃっと笑顔になる。
「ご家族から見ると、そうなんですね」
くすくす笑いながら、三角の耳がぴょこぴょこ動く。うん、かわいい。
「クラウドさんが一緒にいてくれると、わたし、安心して食べて眠れるんです」
幸せだと言うのかと思ったら、違った。
健康に生きるためにあのヘタレが必要だと、この猫さんは言うのだ。
「変わってるって言われない?」
「それは...よく言われます。常識から少しはみ出しているみたいで。夢じゃなくて現実の話をしろとか、共通言語を話せとか、異次元から帰って来いとか」
想像以上にすごい言われようだった。
そこまでは思ってないよ、わたし。
なんだろう、この子。
面白くて可愛くて憎めないな。
うちの弟、よくこの子を落としたなぁ。
「その...あの、ヘタレのこと、好きなの?」
疑ったわけじゃないけど、『番』の関係はわたしには分からないから。ヘタレの気持ちはダダ漏れで、その執念深さも知っている。でも彼女は?
「...好きですよ。大好きです」
弟のことを思い浮かべたのか、一瞬で、愛されて幸せな女の人の顔になった。
ああ、あの子も愛されているんだなと確信する。
「わたしが番ではご心配なこともあるでしょうが、弟さんは必ずや幸せにしますので」
きりっと真顔になり、力強く言われて笑ってしまう。
心配なんかしてないよ。
君があの子の伴侶で安心したよ。
家族になれたら嬉しいな。
伝えるごとに表情が和らいで、リディアちゃんが緊張していたことを知る。
「お姉さんのことも好きになってしまいそうです」
照れたようにそう言われて、クラウドの苦労がうかがえる。
天然の人たらし。本人に自覚なし。
これは、うちの両親も骨抜きにされるだろうな。
実家に向かう道すがら。
「竜、なんだよね...?」
「そうですね。竜人族です」
「...ご両親とも?」
「そうですよ。もちろん、姉も」
「あの.....空、とべる?」
上目遣いでそんなことを聞く。
ちょっと遠慮気味だけど、目がキラキラして子どもみたいに期待してる。
飛べないよ。飛べないけど。
「飛べるようにしますね」
いや、そういうことじゃ...とか言ってるけど、リディアさんが喜んでくれるならなんでもする。
飛べるようになるし、翼が見たいなら生やすし、トカゲ姿が懐かしいって言うならトカゲにだってなってみせる。
がんばれ、クラウド




