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眠り猫は抱き枕を離さない  作者: しんら
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21/30

20.

 

 本日は晴天なり。

 絶好のお掃除日和だ。


 きょうはギルドが請け負う、街の清掃日。

 普段から個別で清掃や片付けの依頼は寄せられているけれど、みんながやりたがるものではないから依頼が達成されないこともある。


 だからこうして、頃合いを見てギルドが簡単な街の清掃を行うことがある。汚れ仕事だし嫌がる職員も多いけどわたしは無心になれるから嫌いじゃない。

 普段ほとんど体を動かさないし、汗をかくいい機会だ。


 それにしても。


 クラウド目立ってるなー。



 クラウドがこちらのギルドに配属されて初めての清掃日らしい。

 最高ランク冒険者がドブさらいなどの最低ランクの依頼をこなしているのはなかなかシュールな光景だ。街のみなさんも明らかにチラチラ見てるし若い娘さんなんかそわそわしてるよ。


 当のクラウドは、ランクがどうこうとかそんなこと思ってないだろうけど。だってすごく、


「楽しそうだね」


 思わず声をかけてしまう程には。


「あ、リディアさん」


 頬を少し染めて、目を輝かせている姿は18歳の普通の少年だ。


「みなさんがすごく感謝してくれて。嬉しいものですね。あ、これ、頂いちゃっていいんですかね?」


 街の人々からのありがとうの言葉や態度に感激しているようだ。小さなお菓子や果物や軽食の差し入れでポケットをパンパンにしている。人気者め。


 まぁ確かに励みになるよね。


 かくいうわたしも、小さな子からアメやお花をもらって心がほくほくだ。


「冒険者なんだし、慣れてるでしょ?」

「いや...」


 珍しく苦い表情のクラウド。

 ぼくの行く場所って、と遠い目になる。


「辺境の地とか未開の地とか魔窟とか迷宮とか...新種の魔物とか屈強な戦士とかゴリゴリの傭兵とか戦闘狂とかそんなんばっかなんで...」


 うん。そこに穏やかな人々のほっこり笑顔はないかもしれないね。...高ランク帯って一体。


「でもいいんです。適材適所、やれる人間がやるのが当たり前ですから」


 簡単に言うけれど、自分の仕事に誇りを持っているから言える言葉だと思う。

 Sランクの依頼も、ギルド職員としてドブさらいをすることも、クラウドの中では同等なんだろうな。


 わたしも、そうでありたい。

 誇りを持って仕事を続けたい。



 またね、と手を振り互いの持ち場へ戻る。


 ギルドから配られた分担表を確認し次の依頼場所へ向かいながら、考えるのはクラウドのこと。


 クラウドはたぶんなんでも一人でできるけど、全てを一人で抱えこむようなことはしない。

 手伝ってもらったり頼ったり任せたり、まわりの人と協力して仕事をする大切さを知っている。

 小さなことにも心から感謝できる。


 年下だけれど、大人だ。すごく。


 自分の力を過信せず、自分が力を発揮しすぎることで悪影響が出ることをきちんと分かっているのかもしれない。だからといって出し惜しみするわけでもない。


 いちいち惚れる。

 もうこれ以上惚れされないで欲しい。



 その時、聞こえよがしに不快な声がした。

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